金融政策・ローン|情報基準日:2026年9月18日 13時台(日本時間)

Smart Select編集部|9月18日の公式概要資料を反映。総裁会見の内容は含みません。

日銀、政策金利1.25%へ。なぜ今、利上げなのか。返済・家賃・売却価格への影響

日銀は9月18日、政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げると発表しました。不動産オーナーがまず確かめたいのは、自分の借入金利がいつ変わり、年間の手残りがどこまで減るかです。

  • 今回の焦点は、原材料などの値上がりが消費者向け価格へ広がり、物価上昇が定着するリスクです。
  • 政策金利の上昇幅が、そのまま全員のローンに適用されるわけではありません。
  • 保有・売却は、返済額だけでなく、純収益・残債・売却費用をそろえて比較します。

出典:日銀「金融市場調節方針の変更」概要、2026年9月18日、1頁

7月は据え置き、9月は1.25%へ

決定日誘導水準決定内容
2026年6月16日1.0%程度金融市場調節方針を変更
2026年7月31日1.0%程度据え置き
2026年9月18日1.25%程度0.25ポイント引き上げ

出典:日銀の6月16日公表文1頁7月31日公表文1頁9月18日概要1頁。決定日と個別ローンの適用日は別です。

9月の概要資料では、企業間の価格上昇が消費者段階にも及び始めていることなどが示されています。日銀は経済・物価情勢を点検しながら金利を引き上げる方針ですが、次回の利上げ日や到達金利が決まったわけではありません。

「政策金利1.25%」は、あなたの借入金利ではない

今回の対象は、金融機関どうしが無担保で翌日まで資金を貸し借りする際の金利「無担保コールレート・オーバーナイト物」です。日銀が誘導するこの短期金利と、個人が銀行に支払うローン金利を分けて読む必要があります。

用語意味と確認先
政策金利日銀が金融政策で誘導する金利。今回の誘導水準は1.25%程度。
適用金利実際の借入に適用される金利。契約書・金利変更通知で確認。
基調的な物価上昇率一時的な変動を除いた物価の持続的な動き。単月の物価指数だけでは判断できない。
実質金利名目金利から予想物価上昇率を差し引いた金利が近似。現在の物価上昇率を機械的に引けばよいわけではない。

日銀は物価の安定を目的に金融調節を行います。一方、銀行は資金調達費用、貸し倒れのリスク、期間、競争環境などを踏まえて貸出条件を決めます。政策金利はその出発点の一つですが、各ローンの上昇幅と改定日は契約に依存します。日銀「金融政策とは何ですか?」

物価高で家計が苦しいのに、なぜ利上げするのか

① 原油高そのものより、値上げが連鎖することを警戒している

金利を上げても、原油の供給を直接増やすことはできません。それでも金融政策の論点になるのは、輸入コストの上昇が、ほかの価格や人々の予想に広がるためです。

例えば、燃料費が上がれば配送費が増えます。企業がその負担を販売価格へ転嫁し、生活費の上昇を受けて賃上げが進めば、人件費も価格に反映されます。この循環自体は、賃金と物価が無理のないペースで伸びるなら問題ではありません。しかし、値上げが続くという予想が強まると、価格設定や賃金交渉にも織り込まれやすくなります。

日銀の7月展望レポートは、人手不足のもとで賃金と価格が互いに影響し合う動きを説明し、物価の上振れリスクを挙げています。9月の判断を読む際も、原油価格だけでなく、国内に波及する仕組みが焦点です。日銀・7月展望レポート、本文1・4~6頁

② 目先の物価が下がっても、先行きの圧力が消えたとは限らない

7月の展望レポートでは、エネルギー負担緩和策が足元の物価上昇率を抑える一方、先行きには原油高や価格転嫁が押し上げ要因になると整理されていました。補助で請求額が一時的に下がることと、企業の仕入れ・人件費の上昇圧力がなくなることは別です。

ここから読み取れるのは、「今月の物価が2%を下回ったから、利上げは不要」とは判断できないという点です。政策が需要や価格設定へ届くまでには時間もかかります。足元の数字と将来の持続性の両方を見る必要があります。

③ 利上げは借入を抑える一方、物価上昇の定着を防ぐための調整でもある

仕組みとして、借入費用が高くなると、企業は採算の低い投資を見送りやすくなり、家計もローンを使う大きな買い物を再検討します。需要の伸びを抑えることが、価格上昇圧力の緩和につながります。ただし、その過程では売上や雇用に下押しが及ぶ可能性もあります。

「名目の金利が上がる」ことと「経済を強く冷やす水準になる」ことも同じではありません。物価上昇の予想が高まれば、金利が変わらなくても実質的な借入負担は軽くなり得ます。日銀が今回も金融環境を緩和的と説明しているのは、金利の数字だけで政策の強弱を判断していないためです。

④ なぜ一度に大きく引き上げないのか

物価の上振れを放置するリスクと、需要を冷やしすぎるリスクがあるためです。6月の公表文でも、原油高による景気への負担と、雇用・所得などによる下支えが併記されていました。利上げの影響は、借入の多い事業者、預金の多い家計、輸入企業などで異なります。

したがって、今回の0.25ポイントという幅を「今後も毎回同じ幅で上がる」という約束とは読めません。物価が落ち着くか、賃金や需要が支えられるかによって、次の判断は変わります。以上の因果関係の説明は、公式資料を踏まえたSmart Selectの解説であり、日銀の発言をそのまま再現したものではありません。

同じ利上げでも、影響が届く時期は違う

経路起こり得る変化一律に言えない理由
銀行の調達・貸出貸出金利の見直し基準金利、優遇幅、改定日が契約ごとに違う
買い手の借入同じ返済予算で借りられる額が減る自己資金・返済期間・所得で補える場合がある
投資家の利回り物件に求める収益率が上がる可能性賃料成長や立地・需給でも評価が変わる
賃貸収益賃料改定と経費増加の両方借入金利と家賃は自動連動しない

上表は一般的な波及経路を整理したSmart Selectの考察です。価格・賃料の実績予測ではありません。

不動産オーナーは、返済・純収益・出口を一緒に見る

残債3,000万円なら、金利0.25ポイント上昇で月返済はいくら増える?

残債3,000万円、残り30年、元利均等返済として、適用金利ごとの返済額を比較します。2.50%から2.75%なら、月約3,936円、年約4.7万円の返済増です。これは個別ローンの感応度を調べる仮定で、日銀の利上げが同じ幅で転嫁されるという予測ではありません。

適用金利2.5%で月11.85万円、2.75%で12.25万円、3%で12.65万円、3.5%で13.47万円。残債3,000万円、残り30年の試算
横棒は0円を起点、共通上限15万円。Smart Select試算。条件と正確な数値は下表。
適用金利月返済年間増加額※5年後残債
2.50%118,536円0円2,642.3万円
2.75%122,472円47,233円2,654.9万円
3.00%126,481円95,339円2,667.2万円
3.50%134,713円194,126円2,690.9万円

※2.50%との差。端数処理前の値から計算し四捨五入。残債は万円単位の小数1桁。

試算条件・計算式・限界

各金利へ直ちに変更し、以後一定、毎月末払い、360回で完済する仮定です。ボーナス返済・繰上返済・返済額据え置き・返済上限は使っていません。銀行の実際の通知額を再現するものではありません。

月返済額 A=P×r÷{1−(1+r)−n}。P=30,000,000円、r=年利÷12、n=360。k回後残債=P(1+r)k−A{(1+r)k−1}÷r。5年後はk=60。

借換手数料・登記費用・保証料・団信の追加費用・所得税等は含めません。賃料や維持費を含まないため、この表だけで物件の利益は求められません。元金返済は支出ですが、税務上の必要経費とは区別します。実際の金利経路が変われば結果も変わります。

返済額が据え置かれる契約でも、金利上昇後は利息への配分が増え、元金が減る速度が遅くなる場合があります。「引落額が同じだから影響がない」とせず、返済予定表の元金部分も確認してください。いわゆる5年ルールや125%ルールが適用されるかは契約次第で、投資用ローンに当然備わるとは限りません。

家賃が上がれば吸収できる? 増収ではなく、経費を引いた残りで見る

仮に家賃を月4,000円増やせても、管理料や修繕負担も増えれば、上の返済増をすべて吸収できるとは限りません。賃料改定が実現する時期や空室の有無も違います。

比較に使うのは、年間賃料から空室損、管理費、修繕積立金、賃貸管理料、固定資産税などを引いた収入です。ここから年間返済額と臨時支出を引き、税引前の手残りを確認します。全国や地域の募集賃料の上昇を、そのまま自分の契約賃料の増収として計上しないことが大切です。

売却価格が下がるとは限らないが、買い手の採算は変わる

投資家がより高い利回りを求めれば、同じ純収益の物件に支払える価格は下がります。簡易的に「価格=年間純収益÷還元利回り」で見ると、その関係が分かります。

年間純収益仮定の還元利回り計算上の価格
120万円3.50%約3,429万円
120万円3.75%3,200万円
126万円(5%増)3.75%3,360万円

純収益が同じなら約6.7%下がる計算ですが、これは査定でも相場予測でもありません。政策金利が0.25ポイント上がると還元利回りも0.25ポイント上がる、という関係は置いていません。純収益の成長があれば、価格への下押しを一部和らげる可能性を示した例です。借入返済・所得税・売却費用は純収益に含めず、売却時の手残りは別途計算します。

実際の価格は立地、築年、賃貸条件、修繕負担、買い手の融資、周辺の成約事例などにも左右されます。実需向けに売れる物件か、賃貸中で投資家が主な買い手になる物件かでも見方は変わります。

Smart Selectの見解:利上げだけを理由に売らず、保有の条件を決める

保有を続けられるかは、現状の収支に加え、金利がさらに0.5~1.0ポイント上がった場合の赤字を手元資金でどれだけ吸収できるかで考えます。これは予測ではなく、耐えられる条件を把握するための試算です。

売却を比べるときは、売却価格から仲介等の費用、残債、該当する税額を引いた手残りを使います。保有中の元金返済による残債減少と、毎年の持ち出しも同じ期間で比較します。借換えなら、金利差による節約が諸費用を回収する前に売却する予定ではないかを確認します。

固定金利や繰上返済は金利変動への備えになりますが、前者には固定化の価格、後者には手元資金が減る負担があります。修繕や空室への資金を残したうえで選ぶ必要があります。

最初に確認するのは、この5項目です

  1. 借入金利の改定条件:固定・変動、基準金利、次の改定日、返済額変更日を通知書で確認する。
  2. 改定後の年間手残り:実際の契約賃料・維持費・返済額で再計算する。
  3. 追加上昇への余力:金利上昇、空室、臨時修繕が重なった場合の必要資金を確認する。
  4. 売却した場合の手残り:根拠のある価格帯と、費用・残債・税を置いて比較する。
  5. 判断を見直す条件:金利通知、賃料改定、修繕計画、査定価格が変わったときに更新する。

日銀の発表を読む目的は、次の金利を当てることだけではありません。自分の物件について「どの条件までは持てるか」を数字で確かめることが、保有と売却を選ぶ準備になります。

出典・参考資料

試算表・返済グラフはSmart Selectが独自に計算・作成。日銀の図表は転載していません。公式説明と一般的な仕組みの解説、仮定計算、Smart Selectの見解を区別しています。