2027年分から、個人のミニマムタックスの判定基準・率、青色申告特別控除の要件が変わります。 ただし「高額な物件を売った人は全員30%課税」「e-Taxなら全員75万円控除」という改正ではありません。自分の所得と申告条件に当てはめて確認する必要があります。
所得税法等の一部を改正する法律は、2026年3月31日に成立・公布されています。本稿は大綱段階の予測ではなく、財務省の成立後の解説に基づき、不動産オーナーに関係する3項目を整理します。成立・公布日の公式記録
2027年分から変わる3項目
| 項目 | 2026年分まで | 2027年分から | 確認する人 |
|---|---|---|---|
| ミニマムタックスの特別控除額・率 | 3億3,000万円・22.5% | 1億6,500万円・30% | 高額の譲渡所得や他の対象所得がある人 |
| 青色申告特別控除 | 10万・55万・65万円の条件を確認 | 65万・75万円の要件見直し、10万円の一部適用除外 | 青色申告する不動産賃貸業者等 |
| 所得税に対する付加税 | 復興特別所得税2.1% | 防衛特別所得税1%、復興特別所得税1.1% | 所得税を負担する人 |
出典:財務省の租税特別措置法等の解説422〜429頁、改正概要17〜18頁。控除額は上限・条件を伴い、付加税の率は収入に掛けるものではありません。
2027年に提出する2026年分の確定申告と、2027年分の所得に適用する制度は別です。 通常、2027年分の所得の確定申告は2028年に行います。記事の公表年や申告する年だけで判断しないでください。
ミニマムタックス:1億6,500万円を超えると必ず課税される?
個人の「特定の基準所得金額の課税の特例」は、通常の計算と比較して追加の所得税を求める制度です。多国籍企業を対象とするグローバル・ミニマム課税とは別です。
2027年分の基本構造は、(基準所得金額−1億6,500万円)×30%が、基準所得税額を上回る場合に、その差額を所得税へ加算するものです。基準を超えても、比較する税額が十分大きければ加算は生じません。財務省解説の適用関係は改正法附則47に対応し、2026年分以前は従前どおりとされています。財務省解説424〜425頁
売却代金ではなく所得を集計する
物件を8,000万円で売り、税務上の取得費・譲渡費用が合計6,500万円なら、特別控除前の譲渡所得は1,500万円です。残債5,000万円を返しても、その返済額をさらに譲渡所得から引くことはできません。建物の取得費には減価償却の反映も必要です。国税庁の譲渡所得計算
| 数字 | 何を見るためのものか |
|---|---|
| 売却代金 | 買い手から受け取る対価 |
| 譲渡所得 | 取得費・譲渡費用等を反映した税務上の所得 |
| 売却後の手残り | 残債・費用・税金を引いた資金 |
| 基準所得金額 | 対象となる複数の所得を制度のルールで集計した額 |
基準所得金額には土地建物の譲渡所得や上場株式等の対象所得も関係します。申告不要を選んだ特定口座の利益だから確認不要、とはいえません。一方、NISA等の非課税所得を無条件に加える制度でもありません。損失繰越や土地等の特別控除の扱いも含め、単純な給与年収の合計と区別します。国税庁:基準所得金額の説明
計算例:判定基準と実際の加算額を分ける
以下は制度の算式を理解するための架空例です。基準所得税額は仮定の入力値であり、所得へ一律の税率を掛けて算出した数字ではありません。比較する基準所得税額には制度に従い復興特別所得税、2027年分は防衛特別所得税も含めて扱います。
| 基準所得金額 | 仮定の基準所得税額 | 2027年の比較額 | 所得税への加算額 |
|---|---|---|---|
| 2億円 | 3,000万円 | 1,050万円 | 0円 |
| 5億円 | 8,000万円 | 1億50万円 | 2,050万円 |
| 5億円 | 1億1,000万円 | 1億50万円 | 0円 |
5億円の例では、(5億円−1億6,500万円)×30%=1億50万円です。ここから基準所得税額8,000万円を引くと2,050万円ですが、1億1,000万円なら上回らないので加算ゼロ。同じ所得規模でも結果が異なります。
説明用の仮定。2026年の比較額は3,825万円、2027年は10,050万円。両年の基準所得税額を8,000万円で固定した算式比較で、将来税額の予測ではありません。加算額に係る付加税を含む最終納付額とは異なります。
この加算額は最終的な増税額そのものではなく、加算された所得税に係る付加税等も含めた申告計算が必要です。住民税を含む売却の総税額とも分けてください。給与年収1,000万円以上というだけで、ミニマムタックスの追加負担が生じるわけではありません。
青色申告:控除額だけでなく帳簿と電子申告を確認
2027年分からは、従来の55万円控除について期限内のe-Tax申告等の条件を加えて65万円へ、所定の電子帳簿保存と電子申告等を満たす場合の控除を75万円へ見直します。単に会計ソフトを使う、またはe-Taxで送るだけで75万円になるわけではありません。財務省解説428〜429頁
確認する順番は、事業的規模等の対象要件、正規の簿記、帳簿の電子保存要件、貸借対照表等を含む期限内申告です。75万円は所定の電子帳簿保存とe-Taxの両方が必要です。控除額は税額から直接75万円を引く意味ではありません。
また、事業として不動産貸付けを行い、前々年の不動産収入が1,000万円を超えるなど所定の条件に該当し、正規の簿記で記録していない場合は、10万円控除の適用除外にも注意します。現金主義の特例適用者等の扱いを含め、賃貸収入の金額だけで決めないでください。2027年分を判定する場合の「前々年」は2025年です。同解説428頁
保有戸数が少ない会社員大家に大きな控除額だけを当てはめるのではなく、現在どの控除をどの要件で受けているかを申告書で確認してください。年が明けてから帳簿を作り直す前提にせず、使用ソフトと保存方法を先に確認すると手戻りを減らせます。
防衛特別所得税:収入に1%を掛ける税金ではない
2027年分から防衛特別所得税1%が創設され、復興特別所得税は2.1%から1.1%へ下がります。復興特別所得税の期間は2047年まで延長されます。基準となる所得税額が同じという単純比較では、付加税率の合計は2.1%です。財務省の成立後の概要17〜18頁
たとえば基準税額100万円なら、従来の復興特別所得税2万1,000円に対し、改正後は防衛1万円と復興1万1,000円です。収入100万円へ直接1%を掛ける話ではありません。また、ミニマムタックスや所得控除で基準税額が変われば、合計率が同じでも納税額は変わります。
給与の源泉徴収では2027年分の専用税額表が公表されています。2026年以前の給与へ流用しないよう、対象年を確認してください。国税庁:2027年分源泉徴収税額表
不動産オーナーが年内に準備すること
- 売却する物件の取得費を確認する。 契約書、購入時の費用、減価償却台帳をそろえ、残債とは分けます。
- 対象所得を年単位で集計する。 不動産以外の株式等の所得も税務確認へ持参します。
- 2026年と2027年の税額を別々に試算する。 売却年の判断では値引き、保有収支、売却費用も合わせます。
- 青色申告の現在の適用条件を確認する。 2025年の賃貸収入、記帳方式、電子保存・電子申告の条件を点検します。
税金を避けるためだけに急いで売ると、値引きや条件悪化が税額差を上回る場合があります。逆に保有を続ければ、家賃収入だけでなく修繕や空室の負担も生じます。税引後の手残りを同じ条件で比較して判断してください。
通常の計算方法は投資用マンションの譲渡所得税、保有時の所得と現金の違いは会社員の不動産投資と節税で詳しく確認できます。
よくある質問
1億6,500万円の物件を売ると必ず対象ですか?
いいえ。売却代金と基準所得金額は別です。取得費等を反映し、対象となる他の所得を集計したうえで、基準所得税額との比較が必要です。
2027年に行う2026年分の確定申告にも新制度を使いますか?
いいえ。本稿のミニマムタックスの基準・率と青色申告控除の改正は2027年分以後が対象です。提出する年と所得の年分を混同しないでください。
e-Taxを使えば75万円控除ですか?
e-Taxだけでは足りません。事業・記帳等の条件に加え、所定の電子帳簿保存と期限内電子申告等を確認してください。
出典と確認範囲
2026年9月14日時点で、財務省の成立記録と成立後の税制改正解説、国税庁の制度説明を照合しました。特例の全てや個別申告の税額を網羅する記事ではありません。暗号資産等の別の施行条件を持つ改正や、2026年からの少額資産特例を一律に2027年開始として扱っていません。


