保有オーナーの運用ノート / 02

家賃の値上げ、どう進める?
賃貸更新時の交渉と
空室時の再募集

「近所の募集家賃が上がった」だけでは、交渉の材料は足りません。成約事例と、継続・入れ替えの収入を並べます。

管理会社とオーナーが賃料改定の資料を確認するイラスト
01 / 募集家賃 ≠ 更新家賃

空室の募集と、入居中の交渉を分ける。

入居中

今の契約を確認

賃料改定条項・増額しない特約・これまでの改定履歴を整理。管理会社を通じて協議の準備を。

退去後

次の募集条件を検討

賃料だけでなく、共益費・フリーレント・募集期間まで含めて比較します。

普通借家の住居を想定。定期借家・サブリースは契約条件を別途確認してください。更新の時期だけで賃料が自動的に上がるわけではありません。[1]

02 / 比較資料

「同じ駅」より、
「同じ条件で決まった部屋」。

集めるもの確認する点
近隣・同じ建物の成約事例いつ、いくらで決まったか
面積・築年・階数・設備自室との差を説明できるか
募集条件の内訳共益費・無料期間をそろえたか
現在の契約と改定履歴いつから同じ家賃なのか
SMART SELECTの見方

高い募集事例を集めるより、条件が近い成約事例を優先します。掲載中の金額しか取れない場合は「募集」と明記。空室募集の相場は参考資料であり、そのまま更新家賃になるとは限りません。

月7,000円高い再募集でも24か月収入は減る例

駅と買い物先と住宅を行き来する住民の生活環境イラスト

試算例:現状家賃9万円。再募集は家賃9.7万円、空室1か月、広告・原状回復等9万円と仮定します。

24か月の選択家賃収入−追加費用
現状で継続216万円
9.3万円で増額合意223.2万円
退去後9.7万円で再募集214.1万円

この仮定では再募集は現状継続より1.9万円少なくなります。上げ幅と入れ替え費用を一緒に見ます。

03 / 24か月の比較

月7,000円高く貸せても、
2年間の収入が増えるとは限らない。

家賃収入 − 入れ替え時の追加費用

現状で継続
216万円
3,000円増で合意
223.2万円
退去・再募集
214.1万円
現状9万円 × 24か月
増額に合意9.3万円 × 24か月
退去・再募集9.7万円 × 23か月 − 9万円

比較用の仮定:同じ24か月で比較。再募集は無収入1か月、広告料・原状回復等のオーナー追加負担を合計9万円と仮置き。共益費収入・管理委託料・税金・ローン等は含まない部分比較で、利益や手残りの総額ではありません。退去の発生や増額の成立を予測するものではありません。

「上げ幅」と「入れ替え費用」をセットで確認

この例では、再募集の収入は現状継続より1.9万円少なくなります。実際の空室期間と見積額に置き換えてから、提案額を検討します。

04 / 更新までの進め方

先に材料。次に提案。合意したら記録。

1 資料をそろえる

契約書・改定履歴・成約事例

2 条件を提案する

理由・金額・希望する開始月

3 合意内容を残す

賃料・適用月・支払い方法

契約上の連絡時期を確認し、管理会社と準備日を決めます。交渉がまとまらない場合の賃料増額請求や対応は、弁護士等に確認してください。

国交省の標準契約書は、負担の増減・経済事情・近隣同種の賃料等を踏まえた協議による改定を示しています。本記事は任意の協議の準備であり、法的な請求の可否・増額幅を判定するものではありません。[1]

05 / そのまま聞ける確認メモ

管理会社には、この4点を。

  • 条件が近い「成約事例」を、時期と内訳付きで出せますか?
  • 比較している金額は、共益費込みですか? 無料期間はありますか?
  • 退去になった場合、募集期間と追加費用はいくらを見込みますか?
  • 契約条項を踏まえ、いつ・どの条件で提案し、どう合意を残しますか?
持ち帰るポイント

増額の根拠と、入れ替えの収支。
この2枚を用意する。

交渉前に必要なのは、強気な募集価格ではなく、条件のそろった比較資料。家賃が上がった後の「持つ・売る」は、別の計算で判断します。

家賃収入から支払う費用を領収書と台帳で確認するオーナーのイラスト
継続と再募集の家賃収入・費用を同じ期間で比べる。

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参照資料
  1. 国土交通省「賃貸住宅標準契約書」第4条等。個別の契約書そのものではありません。

図表・比較例はSmart Select編集用に作成したものです。イラストはイメージです。個別物件の収益・成約・増額を保証するものではありません。