結論|制度は検討段階、採算は物件ごとに確認
国土交通省は2027年度の住宅局関係予算概算要求で、既存の賃貸住宅を改修する際に、住宅金融支援機構が融資する仕組みを検討事項として示しました。新築・取得資金ではなく、既存ストックの改修資金に公的な融資の選択肢を加える方向です。
ただし、2026年9月21日時点で確認できるのは制度案です。対象物件、対象工事、融資額、金利、返済期間、担保、自己資金、開始時期などの商品条件は公表されていません。制度が成立し、自分の物件が対象になる前提で工事や収支計画を決める段階ではありません。
- 制度条件を待つ予算成立後、国交省と住宅金融支援機構の正式な要項で対象・金利・期間を確認する。
- 融資なしでも採算確認工事費、空室期間、募集費、家賃差、維持費を入れ、制度を使わない場合も比較する。
- 売却案と並べる追加借入後の残債だけでなく、改修せず売却する場合の手取りと比較する。
概算要求は制度の成立や個別融資を保証するものではありません。
国交省が示した改修融資案
国土交通省の資料では、「既存ストックの有効活用」として、住宅金融支援機構による既存賃貸住宅の改修融資を検討する方針が示されています。狙いは、老朽化した設備や間取りなどを更新し、賃貸住宅としての活用を進めることです。
現状、賃貸住宅向けの公的融資は、新築や一定の政策目的に対応する商品が中心です。改修費は、オーナーの自己資金、民間金融機関の追加融資、修繕ローンなどで賄うことが多く、築年数や担保評価、既存借入によって調達条件が変わります。新制度が実現すれば選択肢は増えますが、「公的融資だから必ず低金利」「既存ローンがあっても借りられる」とはまだ判断できません。
まだ決まっていない条件
正式要項が出るまでは、次の項目を未確認として扱います。
| 確認項目 | 現時点 | 正式発表後に見る内容 |
|---|---|---|
| 対象物件 | 未確定 | 一棟・区分、床面積、築年、地域、耐震性 |
| 対象工事 | 未確定 | 専有部、共用部、省エネ、耐震、バリアフリー、設備更新 |
| 融資額 | 未確定 | 上限、工事費に対する割合、最低額 |
| 金利 | 未確定 | 固定・変動、適用金利、優遇条件 |
| 返済期間 | 未確定 | 最長期間、完済年齢、据置期間 |
| 担保・保証 | 未確定 | 抵当権順位、既存借入との関係、保証人 |
| 申込時期 | 未確定 | 受付開始、工事着手前申請の要否 |
補助金と融資は異なります。補助金は所定費用の一部が交付される仕組みですが、融資は返済が必要です。金利が低くても、返済額を含む改修後キャッシュフローが改善しなければ、保有負担は増えます。
改修費を何年で回収できるか
制度条件が分からない段階でも、改修そのものの採算は試算できます。
たとえば改修費が120万円、改修後の家賃上昇が月5,000円で、その差額が12か月すべて入金される単純計算なら、回収期間は次のとおりです。
120万円 ÷(5,000円 × 12か月)= 20年
これは金利、空室、募集費、原状回復、管理費、税金を含まない上限寄りの単純計算です。実際には次の式で確認します。
実質年間改善額 = 家賃増加額 × 入居月数 − 追加管理費 − 追加募集費 − 追加修繕費 − 融資利息
回収年数 = 工事総額 ÷ 実質年間改善額
家賃が月5,000円上がっても、退去後の空室が2か月増え、広告料やフリーレントが必要なら回収は遅れます。一方、家賃上昇だけでなく空室期間の短縮、設備故障の減少、原状回復費の抑制が確認できれば、改善額に加えられます。ただし、効果は同時期・同条件の募集実績で確認し、希望値を確定値として置きません。
区分マンションオーナーへの影響
区分所有の投資用マンションでは、専有部と共用部を分ける必要があります。
- 専有部の設備交換や内装は、区分所有者が判断できる範囲があります。
- 窓、玄関扉、配管、外壁、屋上、エレベーターなどは共用部に該当する場合があり、管理規約や総会決議が必要です。
- 管理組合の長期修繕計画とは別に専有部改修を行っても、修繕積立金の負担はなくなりません。
- 追加融資を受けると、売却時の残債と抵当権抹消条件に影響する可能性があります。
ワンルームの競争力は、内装の新しさだけでなく、駅距離、面積、バス・トイレ、独立洗面台、インターネット、セキュリティ、共用部管理、募集条件で決まります。改修項目は、周辺競合で家賃差や空室期間の差が確認できるものから優先します。
実行前に確認する項目
- 工事前後の賃料差:同一駅・面積・築年・階・方角に近い募集と成約を比較する。
- 空室と募集条件:広告料、フリーレント、仲介会社への支払い、募集期間を含める。
- 工事総額:本体工事、設計、撤去、廃棄、仮住まい・休業、予備費を分ける。
- 借入条件:金利、期間、毎月返済、手数料、担保、繰上返済条件を確認する。
- 税務上の扱い:修繕費か資本的支出かで計上時期が異なるため、工事内容と見積書を保存する。
- 出口:改修後の査定額だけでなく、追加残債、売却費用、譲渡所得税を引いた手取りを見る。
- 代替案:現状募集、部分改修、全面改修、売却の4案を同じ保有期間で比較する。
改修融資は、資金を借りやすくする仕組みであり、工事の収益性を保証する仕組みではありません。売る・持つ判断シミュレーターでは、現在の賃料・費用・残債と、改修後の家賃・追加借入を分けて比較してください。
よくある質問
2027年度から必ず利用できますか?
現時点では予算概算要求資料に示された制度案です。予算成立、制度設計、住宅金融支援機構の商品公表を経る必要があり、開始時期や利用条件は確定していません。
投資用ワンルームマンションも対象ですか?
対象となる住宅の種類、所有形態、工事内容は未公表です。区分所有者が専有部だけを改修する場合や、管理組合が共用部を改修する場合が対象になるかは、正式な制度要項で確認する必要があります。
改修すれば家賃を上げられますか?
保証されません。家賃は立地、面積、築年、設備、周辺募集、入居者負担で決まります。工事前に同条件の募集・成約賃料と空室期間を確認します。
本稿は2026年9月21日時点の公表資料に基づく一般的な情報です。制度の成立、融資承認、家賃上昇、空室改善、売却価格を保証するものではありません。