資産管理法人は、不動産の管理や所有を会社で行い、家賃収入を将来の投資や家族の資産形成につなげる方法です。個人と法人の税率差、仕事に応じた家族への報酬、退職金、赤字の繰越などを組み合わせて活用できます。
検討の軸になるのは、給与年収だけでなく「不動産から毎年どれだけ利益が出るか」と「その利益を何に使うか」です。設立・維持費用を含めた試算を作ると、法人化の効果と始める時期が見えてきます。
この記事の要点
- 設立時の主な法定費用は、電子定款・通常の登録免許税で合同会社6万円から、株式会社16.5万円から。証明書代や専門家報酬などを別途見込みます。
- 維持費は、税務・会計費用、法人住民税の均等割、社会保険を分けて予算化します。
- 本文のモデルでは、不動産利益600万円の場合、税金と年間事務費用の差は年約60万〜93万円です。利益を法人に残す前提の試算です。
- 個人所有の物件は、管理委託やサブリースによって法人を活用する方法もあります。
- 青色申告の赤字繰越は、個人が原則3年、法人が原則10年。小規模企業共済は加入資格を満たす経営者の所得控除に使えます。
1.資産管理法人とは?管理・サブリース・所有の3つの形
資産管理法人とは、自分や家族の不動産などを管理・運用するために設立する会社の通称です。会社の形は合同会社や株式会社が一般的で、会社が担う役割によってお金の流れが変わります。
| 形態 | 物件の所有者 | 法人の収入と役割 |
|---|---|---|
| 管理委託型 | 個人 | 入金確認、入居者対応、修繕手配などを受託し、管理料を受け取る |
| サブリース型(転貸型) | 個人 | 個人から借り上げて入居者へ転貸し、家賃を受け取る。個人には借上賃料を支払う |
| 法人所有型 | 法人 | 物件を購入し、家賃収入・経費・借入・売却を法人でまとめる |
既に持っている物件の管理を整えたい場合は管理委託型やサブリース型、買い増しと再投資を進めたい場合は法人所有型が比較対象になります。家賃収入を誰が受け取り、空室や修繕を誰が負担するかを最初に決めると、契約と収支を整理しやすくなります。
2.法人の設立費用はいくらかかる?
合同会社と株式会社の主な法定費用
| 費用 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金×0.7%、最低6万円 | 資本金×0.7%、最低15万円 |
| 定款の認証手数料 | 認証不要 | 1.5万〜5万円 |
| 定款の印紙税 | 電子定款は0円、紙は4万円 | 電子定款は0円、紙は4万円 |
| 電子定款の場合の上記費用合計 | 6万円〜 | 16.5万円〜 |
株式会社の認証手数料1.5万円は、資本金等100万円未満、発起人が自然人3人以下、発起人が設立時の全株式を引き受け、取締役会を置かない場合です。その他は資本金等に応じて3万・4万・5万円になります。上記は創業支援等による登録免許税の軽減を適用しない場合です。
このほか、登記事項証明書、印鑑、司法書士などへの依頼費用を見込みます。資本金は設立手数料とは別で、設立後の会社の運転資金になります。自己資金・当面の経費・融資条件を踏まえて金額を決めます。
設立費用を抑えて家族中心で運営するなら合同会社、出資や会社組織の設計を重視するなら株式会社、という観点で比較できます。税率は会社形態だけでなく、資本金や所得などの条件によって決まります。
出典:国税庁・登録免許税の税額表、日本公証人連合会・定款認証手数料、定款認証の費用、国税庁・課税される定款の範囲
3.年間の維持費は「固定費・利益にかかる税金・社会保険」に分ける
| 区分 | 主な内容 | 予算の考え方 |
|---|---|---|
| 税務・会計 | 税理士、決算申告、記帳、会計ソフト | 管理戸数、仕訳数、自分で行う範囲に応じて見積もる |
| 法人住民税の均等割 | 所得にかかわらず原則発生する地方税 | 東京23区の小規模法人の例では年7万円 |
| 利益にかかる税金 | 法人税、地方法人税、法人住民税の法人税割、法人事業税など | 年間利益から試算する |
| 社会保険 | 健康保険、厚生年金などの会社負担分 | 加入対象者、役員報酬、勤務実態から計算する |
| その他 | 郵送、口座関連費用、住所・役員等の変更登記 | 実際に必要なものを積み上げる |
予算作成の例として、税務・会計・事務費を年23万〜63万円と置き、均等割7万円を加えると年30万〜70万円です。これは本記事で設定する予算幅であり、全国共通の料金相場ではありません。利益にかかる税金、社会保険、物件そのものの管理費・修繕費等は別に計算します。
均等割7万円は、東京23区内に事務所を置き、所定の資本金等の区分が1,000万円以下、従業者50人以下、12か月事業年度などの条件を想定しています。所在地、事務所数、資本金等によって変わります。
4.資産管理法人で節税につながる4つの仕組み
① 個人と法人の税率差を活用する
個人の不動産所得は、原則として給与所得などと合算して所得税を計算します。所得税率は課税所得に応じて5〜45%で、復興特別所得税と住民税も加わります。
一方、一定の中小法人では、年800万円以下の所得に対する国税の法人税率は原則15%、800万円を超える部分は23.2%です。実際の比較には、地方法人税や法人事業税なども含めます。
給与などの所得が高く、不動産の利益を継続して再投資したい人は、この税率差を検討する価値があります。
出典:国税庁・所得税の税率、法人税の税率
② 家族の仕事に応じて報酬を支払う
家族が実際に経理、管理会社との連絡、修繕の判断などを担当する場合、その仕事に見合う給与や役員報酬を設計できます。所得が一人に集中しているケースでは、家族それぞれの所得と税負担を整理する方法になります。
役員報酬は、毎月同額の「定期同額給与」など、損金算入の条件に合わせて決めます。業務内容、勤務実態、金額、決議記録をそろえ、受け取る家族の所得税・住民税・社会保険まで含めて試算します。
出典:国税庁・役員に対する給与
③ 社宅や退職金を長期の資産形成に組み込む
役員社宅は、法人が借りた住宅などを役員へ貸し、税務上の賃貸料相当額を役員から受け取る形で活用します。会社契約、住宅の規模、固定資産税の課税標準額等に応じて扱いを確認します。
退職金は、実際の退職時に、在任期間や職務などに見合う適正額を法人が支払う仕組みです。法人側の損金と個人側の退職所得の扱いを組み合わせて、長期の受取計画を立てられます。役員等の勤続年数が5年以下の場合などは計算方法が異なるため、在任期間も設計に含めます。
出典:国税庁・役員に社宅などを貸したとき、役員の退職金の損金算入時期、役員等の勤続年数が5年以下の退職手当
④ 赤字を将来の利益と相殺する
購入初期や修繕が重なる年に生じた税務上の赤字は、要件を満たせば翌年以降に繰り越せます。法人は原則10年間のため、複数年の利益に対して活用しやすい仕組みです。詳しくは第9章で説明します。
5.どれくらい節税になる?不動産利益別の試算
次は、同じ物件を個人で持つ場合と法人で持つ場合の、税金・追加事務費用の比較です。
試算の前提
- 不動産利益は、家賃から物件の必要経費・減価償却費を引いた金額。法人固有の事務費を引く前です。
- 個人は、不動産所得を加える前の課税所得が600万円または900万円。給与年収とは異なります。
- 法人は東京23区、資本金等1,000万円以下の独立した中小法人、1事務所、従業者50人以下、12か月決算を想定します。
- 法人の追加事務費は年30万円、均等割は年7万円。利益を法人に残して再投資するモデルです。
- 個人の住民税所得割は10%、復興特別所得税は所得税額の2.1%として計算します。
- 社会保険、役員報酬・配当、個人事業税、青色申告特別控除、設立・物件移転費用、所得に応じた控除変動等は含めていません。これらは個別試算で追加します。
単位:万円/年。全バーを同じ0〜500万円の目盛りで表示。
不動産利益 300万円
不動産利益 600万円
不動産利益 1,000万円
Smart Select試算。利益を法人に残すモデル。個人は税負担の増分、法人は税金と追加事務費の合計です。役員報酬・社会保険・設立/移転費用等は含みません。詳しい前提は直前の一覧、数値は直後の表を参照。
| 年間不動産利益 | 個人:既存課税所得600万円の場合の税負担増 | 個人:既存課税所得900万円の場合の税負担増 | 法人:税金+追加事務費 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約97.5万円 | 約131.1万円 | 約97.5万円 |
| 600万円 | 約228.6万円 | 約262.2万円 | 約168.8万円 |
| 1,000万円 | 約403.4万円 | 約444.1万円 | 約288.6万円 |
不動産利益600万円のケースでは、法人の税金は約138.8万円、追加事務費が30万円です。個人側との差は、既存課税所得600万円なら約59.8万円、900万円なら約93.3万円になります。
この比較から読み取れるのは、不動産の利益が積み上がるほど、法人化の固定費を吸収しながら再投資資金を確保しやすくなるということです。自分の物件に当てはめるときは、役員報酬や社会保険を加え、家計と法人の合計で比較します。
試算の再現方法:法人所得=不動産利益−30万円。法人税は800万円以下15%・超過部分23.2%、地方法人税は法人税額の10.3%、法人住民税法人税割は同7%、法人事業税は所得400万円以下3.5%・400万超800万円以下5.3%・800万円超7%、特別法人事業税は基準法人所得割額の37%、均等割7万円を使用しています。事業税等の翌期の損金算入効果と納税時期の差は反映していない、単年度の簡易比較です。
2026年4月1日以後に開始する事業年度からの防衛特別法人税は、基準法人税額から年500万円を控除して計算します。本モデルでは控除後の課税標準が0となるため、税額は0です。
出典:東京都主税局・法人税関係の税率、国税庁・防衛特別法人税。表の金額はSmart Select試算。
6.個人の不動産所得と法人では、経費の範囲がどう違う?
賃貸経営に必要な費用は、個人でも法人でも収益に対応させて計上できます。法人化で選択肢が広がるのは、経営者への報酬や社宅、退職金などの仕組みです。
| 支出 | 個人の不動産所得 | 法人 |
|---|---|---|
| 管理委託料、募集費、固定資産税、火災保険 | 賃貸事業に対応する部分を必要経費に | 法人の事業に対応する部分を損金に |
| 建物・設備の購入 | 減価償却で年ごとに費用化 | 減価償却で年ごとに費用化 |
| 修繕・リフォーム | 修繕費か資本的支出かで処理 | 同様に内容に応じて処理 |
| 借入金の利息 | 賃貸事業に対応する部分を経費に | 法人の事業に対応する部分を損金に |
| 借入金の元本返済 | 借入残高の減少として処理 | 同左 |
| 通信、交通、PC、会計ソフト | 事業利用分を経費に。資産計上等が必要な場合あり | 法人の業務利用分を処理 |
| 本人への給与 | 事業主本人への給与は必要経費の対象外 | 要件を満たす役員報酬を損金に |
| 同一生計の家族への給与 | 青色事業専従者給与など所定の条件で処理 | 実際の業務に応じた給与・役員報酬を処理 |
| 社宅・退職金 | 事業主本人について法人制度とは扱いが異なる | 契約・負担額・支給条件等を整えて活用 |
私用と共用する通信費や車両費は、利用割合などの根拠で区分します。改良工事は資本的支出として減価償却する場合があり、土地は減価償却の対象に含めません。
個人の不動産貸付けで青色事業専従者給与を使う場合は、事業としての規模、専ら従事する期間、事前の届出、適正な給与額などを確認します。一般に5棟・10室が規模判定の目安になりますが、実態を踏まえて判断します。
区分マンションの修繕積立金も確認したい項目です。個人では原則として修繕完了時に経費化しますが、管理規約に基づく支払義務、返還されないこと、修繕以外への流用がないこと、合理的な金額といった条件を満たせば、支払期日の属する年の必要経費にできます。
経費の整理は「必要な支出を正しく計上し、使える制度を選ぶ」という順で進めると、資金計画と税務処理がつながります。
出典:国税庁・不動産所得、青色事業専従者給与、修繕費の判定、修繕積立金の取扱い
7.個人所有の物件を法人にサブリースさせる方法
サブリース型では、物件を個人で所有したまま、法人が借り上げて入居者へ貸します。個人は法人から借上賃料を受け取り、法人は入居者の家賃と借上賃料の差額から運営費を支払います。
管理・募集等の費用を支払う
年間家賃1,200万円・借上賃料1,080万円とした仮定。差額10%は推奨料率ではなく、業務と負担に応じて賃料を設定します。
年間家賃1,200万円の例
| お金の流れ | 年額・仮定 |
|---|---|
| 入居者が法人へ支払う家賃 | 1,200万円 |
| 法人が個人へ支払う借上賃料 | 1,080万円 |
| 法人に残る差額(運営費等を引く前) | 120万円 |
個人側の家賃収入は、直接賃貸する場合の1,200万円から、法人からの借上賃料1,080万円に変わります。その一方で、法人側に120万円の差額が生じます。減価償却費は、建物を所有する個人側で計上します。
この10%という差額は仕組みを示す仮定です。借上賃料は、周辺相場、外部業者の見積もり、空室時にも賃料を払うか、修繕や募集費を誰が負担するかなどから決めます。
契約にまとめる内容は、次のとおりです。
- 法人が担当する管理・募集・入居者対応の範囲
- 空室、滞納、原状回復、修繕の負担
- 借上賃料、改定条件、契約期間、解約条件
- 管理会社との役割分担、金融機関への確認
- 賃貸住宅管理業法上の契約の位置付けと必要な手続き
効果の計算は「個人側で減る税額−法人側で増える税額−追加運営費」です。既存法人を使う場合と、新しく法人を設立する場合では追加費用が異なるため、両方を比較すると導入方法を選びやすくなります。
8.小規模企業共済と社会保険は、それぞれどう活用・設計する?
小規模企業共済は、退職資金を積み立てながら所得控除を受ける制度
小規模企業共済は、加入資格を満たす個人事業主や会社役員などの退職金づくりに使える制度です。月額1,000〜7万円、500円単位で掛金を設定でき、年額最大84万円が個人の所得控除になります。
年84万円を拠出し、控除の全額が同じ税率帯に収まる場合の税負担軽減の概算は次のとおりです。
| 所得税の限界税率 | 所得税・復興特別所得税・住民税の軽減額 |
|---|---|
| 20% | 約25.6万円/年 |
| 23% | 約28.1万円/年 |
| 33% | 約36.7万円/年 |
| 40% | 約42.7万円/年 |
計算式は84万円×(所得税率×1.021+住民税率10%)。控除によって税率帯をまたぐ場合は区分ごとに計算します。
会社員として他社と常時雇用関係にある人は、副業法人の役員であっても加入対象外です。専業化・独立などのタイミングで、事業規模や役員としての加入資格を確認すると、将来の資産形成に組み込みやすくなります。
受取時の税区分は受取理由・方法で変わります。任意解約では、掛金納付月数が240か月未満の場合に受取額が掛金合計を下回るため、退職予定と資金用途に合わせて掛金を設定します。
出典:中小機構・掛金、会社員と法人役員の兼務、受取り・解約、国税庁・掛金控除
社会保険は役員報酬・勤務実態をもとに別途計算する
小規模企業共済による効果は所得税・住民税の軽減です。健康保険・厚生年金は報酬等を基準に計算するため、共済の掛金とは分けて試算します。
法人事業所は、事業主だけの場合を含め、被保険者となる人を使用すると社会保険の加入対象になります。本業の勤務先と資産管理法人の両方で加入要件を満たす場合は、二以上事業所勤務の手続きを行い、両方の報酬を合算して標準報酬月額を決めます。
会社負担分・本人負担分を含め、現在の加入先、年齢、役員報酬、勤務実態をそろえて確認しましょう。国民健康保険を利用している場合も、その保険料計算と所得税の所得控除は区別して確認します。
出典:日本年金機構・適用事業所と被保険者、複数の事業所に勤務する場合
9.赤字は何年繰り越せる?個人3年・法人10年
通常の賃貸経営・青色申告等の要件を満たす場合。法人は2018年4月1日以後に開始する事業年度の欠損金。
300万円翌年に控除
200万円残りの繰越
100万円
翌年の所得200万円を全額控除できる中小法人等の例。
青色申告などの要件を満たす場合、通常の賃貸経営の赤字は次のように扱います。
| 項目 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 翌年以降への繰越 | 原則3年 | 原則10年 |
| その年の給与との相殺 | 不動産所得の赤字を原則損益通算できる | 法人の所得の中で計算する |
| 繰り越す金額 | その年の損益通算でも控除しきれなかった純損失 | 税務上の欠損金 |
| 主な手続き | 青色申告、継続した確定申告など | 赤字年度の青色申告、その後の連続した確定申告など |
法人の10年は、2018年4月1日以後に開始する事業年度の欠損金に適用されます。中小法人等は原則としてその年の所得全額を上限に控除でき、それ以外の法人には通常50%の制限があります。
例えば、法人に300万円の繰越欠損金があり、翌年の所得が200万円なら、中小法人等では200万円を控除して課税所得を0円にし、残る100万円を期限内の次の年度へ繰り越せます。均等割などの固定負担は別に予算化します。
個人では、まずその年の給与などとの損益通算を行い、残った対象額を繰り越します。土地取得の借入金利息に対応する赤字などは通算対象から除きます。なお、ローン元本返済による現金収支の赤字と、減価償却等を含む税務上の赤字は別の数字です。
毎年の収支に加え、減価償却が減る時期や修繕予定を並べると、繰越を活用できる年度まで見通せます。
出典:国税庁・青色申告制度、欠損金の繰越控除、不動産所得が赤字の場合
10.保有から売却・相続まで、あわせて設計したい5項目
① 既存物件を移すか、次の購入から法人にするか
比較する選択肢は「個人保有を続ける」「次の物件から法人で買う」「既存物件も法人へ移す」の3つです。
既存物件を法人へ売却する場合は、個人の譲渡所得税、法人の不動産取得税、登記費用、融資の借換え費用などを見積もります。金融機関には、法人の借入条件、保証、団信、自己資金の条件を確認します。
個人と自分の法人の取引も、価格の根拠を残して進めます。不動産を現物出資する場合も譲渡として扱われるため、税務と登記を含めて比較します。
出典:国税庁・時価より低い価額で売ったとき、不動産の現物出資
② 売却時の税金まで含めて収支を比較する
個人の土地・建物の売却益は分離課税です。一般的な税率は、売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡で20.315%、5年以下の短期譲渡で39.63%です。所得税・復興特別所得税・住民税を含みます。
法人は、原則として売却損益をその年度の他の損益と合わせて法人所得を計算します。保有中の家賃利益と売却益を一緒に試算すると、予定する保有期間に合う所有方法を選びやすくなります。
出典:国税庁・長期譲渡所得、短期譲渡所得
③ 法人に残す資金と、個人が受け取る資金を決める
再投資用の資金は法人に残し、生活費は役員報酬、将来の受取りは退職金など、目的に合わせて計画します。配当は法人の損金にはならず、受け取る個人側にも課税関係が生じます。
個人が法人へ実際に貸し付けた資金の元本返済は、給与や配当とは異なる返済です。契約、入出金、残高を管理し、資本金とは区別します。受取方法まで含めた計画が、法人化後の使いやすさにつながります。
④ 消費税は収入の種類ごとに確認する
居住用住宅の家賃は原則非課税です。法人が個人から受け取る管理業務の報酬は、住宅家賃とは別のサービス対価として扱います。事務所賃料、駐車場、建物売却なども取引内容に応じた確認が必要です。
サブリースでは、転貸先が住宅として使用することが契約等で明らかな場合、借上賃料も住宅貸付けとして扱われます。課税売上高、資本金、インボイス登録の有無等と合わせて、納税義務を確認します。
出典:国税庁・住宅の貸付け
⑤ 相続・承継は持分と経営権も設計する
法人所有では、物件を法人に保有させたまま、株式や持分を通じて承継を計画できます。誰が出資し、誰が経営を引き継ぎ、収益をどう配分するかを早い段階で整理する方法です。
相続・贈与では株式等の評価が必要で、会社に蓄積した利益や不動産の価値も評価に関係します。土地保有割合が高い会社などには特有の評価方法があるため、資産構成と承継時期を合わせて試算します。
11.法人化の検討を進めるために用意するもの
資産管理法人を設立すべきか、いつ設立するか、具体的な節税額や経費・申告の扱いは、税理士に相談してください。 物件別の収支と家計の状況を伝えることで、自分に合う所有方法を比較できます。

相談では、次の資料を用意すると具体的な比較が進みます。
- 直近の確定申告書・源泉徴収票
- 物件ごとの家賃、経費、減価償却明細
- 借入残高・返済予定表・融資契約
- 修繕計画、買い増し予定、売却予定時期
- 法人で担当する業務、家族の役割、報酬案
- 法人の維持費見積もりと、必要な生活費・再投資額
設立後は法人設立届や青色申告承認申請などを進めます。初年度から青色申告を利用する場合の申請期限は、原則として「設立日以後3か月を経過した日」と「最初の事業年度終了日」のいずれか早い日の前日です。決算期・報酬・社会保険の手続きも一緒に組み立てます。
まとめ|年間利益と資金の使い道から、法人の活用方法を選ぶ
資産管理法人は、不動産の利益を次の投資や家族の資産形成へつなげる選択肢です。管理・サブリース・所有のどこを法人に担わせるかによって、必要な費用と活用できる仕組みが変わります。
まずは年間の不動産利益を整理し、個人保有と法人活用の税金・維持費・社会保険を比較しましょう。そのうえで、売却と受取りまで含めた5年・10年の収支を並べると、自分に合う始め方とタイミングを選べます。
この記事は2026年9月27日に確認した公表資料に基づく一般的な解説です。法人を設立すべきかという判断や具体的な税務相談は、所在地、契約、所得、所有形態などをもとに税理士へ相談してください。