同じ3,000万円のマンションでも、土地と建物の内訳が違えば減価償却費は変わります。ただし、税金を減らすために建物割合を自由に選ぶものではありません。ここでは国内の物件を購入する個人オーナーが、契約前に確認する順番を整理します。

売買価格・評価額・取得価額を分ける

言葉何のための金額か
売買価格売主と買主が合意する取引の代金
固定資産税評価額固定資産税等の計算に使う評価額
減価償却の取得価額建物等の購入代金に、算入すべき取得費用等を反映した金額

売買価格は売主の希望だけで決まるわけでも、固定資産税評価額で機械的に決まるわけでもありません。個別取引の価格が妥当かという問題と、その総額を税務上どう区分するかという問題を分けます。

土地と建物をまとめて買ったときは、まず売買契約書の内訳を確認します。内訳があっても、近隣価格や評価資料などから見て合理的かどうかを検討する必要があります。

契約書の内訳と消費税額を読む

土地の譲渡は消費税が非課税です。建物は課税取引であれば対象になるため、契約書に記載された建物分の消費税等から、税抜価格を逆算できる場合があります。国税庁 No.6301 Q&A

**例:土地・建物の税込売買代金が3,000万円、建物分の消費税等が100万円、税率10%**とします。100万円が建物代金だけに対応し、ほかの課税項目や諸費用を含まない契約が前提です。

図は左右にスクロールできます

税込総額3000万円を、土地1900万円、建物税抜1000万円、建物の消費税等100万円に分ける計算例
仮定の契約例。税率10%。消費税等100万円が建物代金のみに対応する場合。
  • 税抜建物価格:100万円 ÷ 10% = 1,000万円
  • 税込建物価格:1,000万円 + 100万円 = 1,100万円
  • 土地価格:3,000万円 − 1,100万円 = 1,900万円

消費税額の記載がない契約に、勝手にこの式を当てはめてはいけません。例えば売主が私的な立場で行う非事業の売却など、建物売買に消費税が課されない場合もあります。売主の取引上の立場と、契約書の記載内容を確認します。

内訳がない場合は、合理的な根拠で分ける

国税庁は、消費税上の土地・建物の区分について、時価、固定資産税評価額等、原価の比率による按分などを示しています。これは合理的な区分方法の例で、どの取引にも無条件で通用する選択メニューではありません。

例えば売買代金2,400万円を分けるために使う評価額が土地600万円・建物400万円で、この評価比率による按分が取引の事情に照らして合理的と判断できるケースなら、建物分は2,400万円×400÷1,000=960万円です。評価額400万円そのものを建物代金にする計算ではありません。この例は消費税が課されない取引を仮定し、諸費用を除いています。

使う資料確認するところ
売買契約書・精算書内訳、消費税額、総額との整合
固定資産評価証明書等土地・建物の双方、対象年度、持分
不動産鑑定・価格の説明資料時点、対象、算定条件
工事内訳・取得原価資料本体・設備の範囲と根拠

区分所有マンションでは、土地の敷地権持分や共用部分との対応も必要です。マンション全体の土地評価額と、購入する1戸の建物評価額をそのまま比べてはいけません。

諸費用も確認して取得価額をそろえる

購入代金の内訳が分かっても、減価償却の基礎がそこで完成するとは限りません。購入手数料など取得に必要な費用を含めるためです。国税庁 No.2106「取得価額」

また、消費税の税込・税抜の経理方式でも扱いが変わります。免税事業者は税込経理です。仲介手数料、登記関係費用、税金、工事費をまとめて一律に処理せず、どれを取得価額に含め、どれをその年の経費にするかを整理してください。前の1,100万円・960万円は、諸費用を反映する前の例です。

建物分が決まった後、さらに建物本体と設備を区分する論点があります。土地・建物の按分と、躯体・設備の区分を一度に混ぜず、設備の種類と資料を別途確認します。

商談で聞くべき質問

「建物価格はいくらですか」だけでなく、**「その内訳は契約書のどこにあり、どの資料で説明できますか」**と質問してください。契約書、評価証明、設備の内訳が食い違う場合は、申告前ではなく契約前に解消する方が判断しやすくなります。

税理士に渡すときも、販売資料の「建物○%」だけではなく、契約書・精算書・評価資料・費用明細をセットにします。販売会社の節税試算と申告時の計算が同じ前提か、確認できます。

よくある質問

建物割合を高くすれば節税できますか?

建物の取得価額が増えれば償却費は増えますが、土地と建物の区分には合理的な根拠が必要です。希望する節税額に合わせて割合を選ぶものではありません。

固定資産税評価額がそのまま購入時の建物価格ですか?

同じではありません。評価額を按分の比率として使う場合と、実際の売買代金そのものを混同しないでください。