都市の人口ランキングだけで、投資する物件は選べません。
人口・世帯・物価の集計範囲をそろえ、駅や間取りごとの家賃と空室条件まで確認しましょう。
- 統計の比較条件市と都、基準日、世帯の定義をそろえる。
- 物件周辺の需要駅距離、間取り、競合する募集物件を確認。
- 費用を引いた収支家賃下落・空室・修繕費を同じ条件で比較。
人口が多い都市が、必ず高い利回りや少ない空室につながるわけではありません。
月10万円の家賃をストレス条件へ置き換える
試算例:家賃10万円を5%下げ、年間60日の空室を置きます。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 満室家賃 | 10万円×12か月 | 120万円 |
| 5%下落・空室60日 | 10万円×0.95×12×305÷365 | 約95.3万円 |
| 収入差 | 120万円−約95.3万円 | 約−24.7万円 |
都市人口の大小ではなく、対象住戸の空室日数と成約家賃をこの式へ入れます。
1. 4自治体の人口・世帯・物価を比較
以下は各自治体の2026年7月1日現在の推計人口と、同じ推計人口資料に付された世帯数です。東京23区は東京都区部、他は市全体です。東京23区・福岡市の世帯数は参考値で、自治体間で定義・推計方法も完全には一致しません。「人口÷世帯数」は単純比で、単身世帯率や賃貸需要を示しません。
| 比較項目 | 東京23区 | 大阪市 | 名古屋市 | 福岡市 |
|---|---|---|---|---|
| 人口 | 9,995,823人 | 2,817,627人 | 2,353,152人 | 1,671,893人 |
| 同資料の世帯数 | 5,546,657世帯(参考) | 1,602,764世帯 | 1,197,801世帯 | 894,374世帯(参考) |
| 人口÷同資料の世帯数(単純比) | 1.80人 | 1.76人 | 1.96人 | 1.87人 |
| 前月からの人口増減 | +1,449人 | -409人 | +1,002人 | +144人 |
| 2024年消費者物価地域差指数(総合) | 東京都区部 104.9 | 99.4 | 99.1 | 98.5 |
注:前月からの世帯増減は公表資料の形式が自治体ごとに異なるため、本文では断定せず、取得した月次表で確認できる場合だけ更新します。消費者物価地域差指数は2024年平均の都市別指数で、2026年7月の物価上昇率ではありません。
東京23区は9,995,823人・5,546,657世帯(参考)、大阪市は2,817,627人・1,602,764世帯、名古屋市は2,353,152人・1,197,801世帯、福岡市は1,671,893人・894,374世帯(参考)です。単純比は世帯類型や賃貸需要を示しません。
2. 人口から賃貸需要までの流れ
市全体の人口は、賃貸契約までの最初の一段階です。人口・転入から世帯、物件条件、家賃、問い合わせ・成約へと段階を分けると、営業資料の「人口が増えているから安心」という説明を検証しやすくなります。
3. 物価と家賃を混同しない
消費者物価指数(CPI)は、家計が購入する財・サービスの価格変動を示す指標です。総務省は消費者物価指数のほか、全国平均を100とした「消費者物価地域差指数」も公表しています。地域差指数の「総合」は持家の帰属家賃を含まず、年ごとに全国平均を100とするため、指数の年次差をその都市の物価上昇率としては読めません。家賃の上昇率や投資利回りを直接示す指標でもありません。
| 指標 | 何を示すか | 投資判断での使い方 |
|---|---|---|
| 消費者物価指数(CPI) | 時間の経過による価格変動 | 管理費・設備・修繕費の上昇を確認する |
| 消費者物価地域差指数 | 全国平均=100とした地域間の物価水準 | 入居者の生活コストや賃金との比較材料 |
| 募集家賃 | 募集時に表示される賃料 | 成約家賃やフリーレントと分ける |
| 成約家賃 | 実際の契約条件に近い賃料 | 収入計画の基礎にする |
4. 都市別の賃貸需要をどう読むか
この章では、都市名の一般論ではなく、今回の同日データから読み取れることと、まだ確認できないことを分けます。1か月の人口増減だけで将来を断定するのではなく、「人口・世帯の動き」から需要の仮説を置き、物件駅の成約データで反証する使い方です。
| 地域 | 今回の数字から読めること | 投資判断の仮説 |
|---|---|---|
| 東京23区 | 人口約1,000万人、参考世帯約554.7万、単純比1.80。4地域で人口規模が最大です。 | この表だけでは世帯類型や駅勢圏需要は判定できません。駅勢圏の世帯類型、12か月以上の移動、成約家賃、新規供給で確認します。 |
| 大阪市 | 人口約281.8万人、世帯約160.3万、単純比1.76。今回の人口は前月比409人減です。 | 1か月の市全体の増減だけでは長期需要を判定できません。同じ駅・面積・築年・家賃帯の成約実績で確認します。 |
| 名古屋市 | 人口約235.3万人、世帯約119.8万、単純比1.96。今回の人口は前月比1,002人増です。 | 単純比から単身向け需要は推定できません。駅勢圏の世帯類型、移動、募集数と成約実績を確認します。 |
| 福岡市 | 人口約167.2万人、参考世帯約89.4万、単純比1.87。今回の人口は前月比144人増です。 | 人口増だけで学生・就業者需要や供給余力は判定できません。駅勢圏の世帯類型、成約家賃、新規供給で確認します。 |
この表からの分析結果
今回の比較では、東京23区は「需要の母数」、大阪市は「市全体の人口だけでは説明しにくい都市」、名古屋市は「人口増と世帯構成を分ける都市」、福岡市は「人口増と供給集中を同時に見る都市」と整理できます。これは投資先の優劣ではなく、営業資料で確認すべき仮説の違いです。
推測の限界:前月比は1か月の変化であり、転入超過・出生死亡・外国人人口・住民票の移動などの内訳を含めて確認しない限り、長期的な需要増とは断定できません。
5. 投資判断で確認する数字
| 確認項目 | 営業資料と照合する数字 | 再計算する条件 | 判断の目安 |
|---|---|---|---|
| 人口・世帯 | 公表時点の国勢調査メッシュで駅勢圏を確認し、12か月推移は同一範囲の自治体月次住基を取得できる場合だけ比較 | 人口横ばい・対象世帯-5% | 人口増でも対象間取りの世帯が増えているか |
| 家賃 | 同じ駅・面積・築年・徒歩分数の募集家賃と成約家賃 | 家賃-5%、フリーレント1か月 | 募集家賃ではなく実際の成約条件で収支を作る |
| 空室 | 管理戸数、空室戸数、退去回数、募集開始日、成約日、広告料 | 空室30日・60日・90日 | 空室率と空室期間を混同しない |
| 競合供給 | 同一駅の募集戸数、新築戸数、供給予定、競合の初期費用 | 競合+10%、成約日数+30日 | 人口増より供給増が大きくないか |
| 物価・修繕 | CPI、管理費、修繕積立金、設備見積、過去の修繕履歴 | 運営費+10〜20% | 家賃上昇が費用上昇を上回るか |
| 融資・収支 | 適用金利、基準金利、返済額、残債、税・保険・管理費 | 金利+1ポイント、家賃-5%、空室60日を同時計算 | 手残りではなく、悪化時も返済継続できるか |
営業資料を検証する計算式
| 確認したい指標 | 計算式 | 営業資料との照合 |
|---|---|---|
| 実効総収入(EGI) | M×12−M×12×V÷365−M×F(M=月額賃料、V=空室日数、F=フリーレント月数。重複期間は二重控除しない) | 満室想定の年間賃料になっていないか |
| 借入返済前の年間純収益 | EGI−運営費(管理費、修繕積立金、管理委託料、固定資産税等、保険、通常修繕を各1回) | 同じ税・費用を二重控除していないか |
| 実質利回り(本記事) | NOI÷(購入価格+取得諸費用)×100 | 表面利回りだけで比較していないか |
| 税引前の年間現金収支 | NOI−年間元利返済−運営費に未算入の資本的支出 | 所得税等と固定資産税等を区別し、元本返済を利益としていないか |
実際の確認方法
| 確認する数字 | 主な確認先 | 取得・確認する資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 駅1km圏の人口・世帯 | e-Stat・jSTAT MAP、自治体統計 | 公表時点の国勢調査メッシュ、取得できる場合は同一町丁等の月次住基 | 1kmメッシュは駅からの正確な円形集計でも月次統計でもありません。異なる統計の増減を直結させません。 |
| 成約家賃・フリーレント・広告料 | 管理会社、仲介会社、賃貸借契約書 | レントロール、入金明細、契約書、募集条件、広告料・仲介手数料の明細 | ポータルサイトの募集家賃だけでは成約条件を確認できません。 |
| 空室率・退去回数・空室日数 | 管理会社、サブリース会社 | 月次管理報告、退去一覧、募集開始日、申込日、契約日、入居日 | 時点空室率=基準日の空室戸数÷同一定義の対象戸数、期間空室率=空室延べ戸日÷貸付可能延べ戸日。除外規則もそろえます。 |
| 競合募集戸数 | SUUMO・LIFULL HOME'S・アットホームなど | 同じ駅、面積、間取り、築年、徒歩分数で同日に検索した件数 | 重複掲載があるため、掲載件数をそのまま戸数とみなさないようにします。 |
| 新築・供給予定 | 自治体の建築・都市計画情報、開発事業者、仲介会社 | 建築計画、募集開始予定、同一駅周辺の新築・大規模供給一覧 | 公開情報だけで将来供給を完全に把握できないため、営業資料の供給見込みも根拠を確認します。 |
| 返済継続性 | 金融機関、販売会社、管理会社 | 融資返済予定表、金利条件、実際の管理費・修繕費・税金 | 実数値を入れた基本ケースと、ストレスケースを同じ表で比較します。 |
公開情報だけでは確認できない項目
成約家賃、広告料、退去回数、実際の空室日数、物件単位の成約日数は、一般公開統計だけでは把握できないことがあります。購入前は、管理会社の過去12か月資料と、同じ駅・間取りの成約実績を提出してもらい、提出できない数字は「未確認」として収支計算に反映します。
新設着工の減少と、既存賃貸の収入減少は別の話
新しく建つ賃貸住宅の戸数は供給の指標です。すでに存在する住宅の戸数や、家賃収入の合計を直接表すものではありません。将来の市場縮小を読むときは、何が減るという予測なのかを先に分けます。
保有物件では、全国の新設戸数より、同じ駅・同じ間取りに競合する募集と入居実績のほうが具体的な判断材料になります。都市全体の需要が底堅くても、自室と競合する供給が増えれば募集期間が延びる可能性があります。逆に供給が減っても、借り手も減るなら有利とは言い切れません。
同じ都市の中でも単身向けと広めの住戸を分け、募集条件と成約日数を比較してください。長期予測から導けるのは、全国一律の家賃上昇・下落率ではなく、所在地と物件タイプを絞って見直す必要性です。
ストレスケースの計算例
| 項目 | 計算方法 |
|---|---|
| 家賃5%下落 | 現在の月額家賃×0.95 |
| 家賃5%下落+空室60日 | EGI=月額家賃×0.95×12×(365−60)÷365。月10万円なら952,603円(円未満四捨五入) |
| 運営費10%増 | 管理費・修繕費・税金・保険・管理委託費の合計×1.10 |
| 金利1ポイント上昇 | 残高B、残月n、上昇後月利r=(現年利+0.01)÷12として、月返済A=B×r×(1+r)^n÷((1+r)^n−1)を再計算 |
| 最終確認 | EGI−増加後運営費−年間元利返済−運営費に未算入の資本的支出が赤字でも補填できるか確認 |
都市平均から駅・面積・家賃へ絞って比較する
東京の統計対象と将来世帯予測は東京都の人口・CPI・賃貸需要で分けて確認できます。個別物件は都市平均を当てはめず、この記事の下にある物件価格AIとExcelシミュレーションで価格・空室・家賃・金利を対象住戸の条件へ置き換えてください。
本記事は一般的な情報提供を目的とし、特定の物件の購入・売却や融資を推奨するものではありません。統計は更新・改定される場合があるため、契約前には各出典の最新公表資料を確認してください。
よくある質問
人口が増えている都市なら空室は少ないですか?
いいえ。市全体の人口は物件の駅勢圏と一致しません。単身世帯、転入者の属性、家賃、面積、駅距離、競合供給を物件所在地で確認します。
CPIが上がれば家賃も同じ割合で上がりますか?
いいえ。CPIは財・サービス全体の価格指数で、家賃改定率そのものではありません。募集家賃、成約家賃、更新率、空室日数を別に見ます。
東京23区・大阪・名古屋・福岡ならどこが有利ですか?
都市名だけでは決められません。人口・世帯の動きに加え、物価水準、購入価格、家賃、競合供給、修繕費、融資条件を同じ前提で比較してください。
次にすること
都市統計を、個別物件の価格と収支へ落とし込む
都市全体の人口を満室根拠とせず、個別価格と空室・家賃条件を別々に確認します。
個別物件の価格を匿名取引情報と比較
都市規模ではなく、同じ地域・面積・築年の取引情報を比較材料にします。
AIを使わず収支を計算するAIの提供状況を確認中売却価格を自分で置いた収支比較は利用できます。手入力の収支計算へ →家賃・空室・金利を再計算
都市比較の統計をそのまま使わず、対象物件の実数へ置き換えます。
購入検討用の収支計画書Excelで再計算する記事の確認項目を手元の資料と照らし、試算の前提は自分の条件へ置き換えてください。ツールの結果は将来の収益や税務・法務上の適用を保証しません。