投資用マンションの営業で、「頭金0円で買えます」「フルローンなので自己資金を使いません」と説明されることがあります。

借入で購入価格をすべて賄えるなら、現金を残したまま資産を持てるように見えます。しかし、ここでは融資率購入時に必要な現金を分けて確認する必要があります。

先に結論|フルローンと自己資金ゼロは別

「フルローン」という言葉には法令上の統一された商品定義があるわけではないため、この記事では物件の購入価格と同額を借りる100%融資を指して使います。

実際に100%融資を扱う例はあります。オリックス銀行は2026年8月確認時点で、申込内容によって購入価格の100%ローンを取り扱える場合があると案内しています。ただし、原則として同行の担保評価額の範囲内です。

一方、同じオリックス銀行は、不動産購入・建築時の諸費用を含めた融資は取り扱わず、融資金額は購入価格または建築工事代金の範囲内と案内しています。

つまり、同じ金融機関の例でも、

確認項目意味
100%融資審査等の条件を満たせば購入価格全額を借りられる場合がある
諸費用購入価格とは別に、自己資金で支払う項目が残る場合がある

という構造です。

「頭金0円」と「現金0円」を同じ意味で受け取らないことが最初の確認です。

100%融資でも諸費用まで借りられるとは限らない

金融機関によって融資対象・審査・担保評価は異なります。そのため、「A銀行で100%融資がある」ことを、他の銀行やすべての物件へ一般化はできません。

確認したいのは、営業担当者が示す「融資額」の内訳です。

資料で見る数字確認すること
物件価格売買契約上の土地・建物の購入価格
融資額物件価格の何%を借りるのか
購入諸費用融資対象に含まれる費用・含まれない費用
自己資金契約から引渡しまでに実際に口座から出る現金
購入後予備資金引渡し後に空室・修繕等へ使える現金がいくら残るか

営業資料に「自己資金0円」と書かれている場合は、頭金だけを0円としているのか、税・登記・ローン費用等まで含めて0円なのかを確認します。

頭金0円でも現金が必要になる項目

購入時に発生し得る費用は、物件、取引形態、金融機関、契約内容によって変わります。

例えばオリックス銀行は、ローンに関する費用として取扱事務手数料、印紙代、登記費用、火災保険料等を案内しています。保証料は不要、団信保険料も原則不要ですが、選ぶ団信によっては金利が上乗せされる場合があります。

不動産の取得・契約そのものでは、次のような現金支出も確認します。

費用候補確認ポイント
ローン関連費用金融機関の事務手数料、契約方式、団信特約等
登記関連登録免許税、司法書士報酬など。投資用物件では自己居住用住宅の軽減要件を当然には使えない
売買契約の印紙紙の不動産譲渡契約書では契約金額等に応じ確認する
火災保険等融資条件や補償内容に応じた保険料
仲介手数料媒介取引で発生する場合は、宅建業法上の報酬上限と実契約額を確認する
不動産取得税等取得後に発生する税も含め、支払時期まで資金計画へ入れる

国税庁によると、不動産の所有権移転等の登記には登録免許税がかかります。また、自分が居住する住宅を対象にした軽減措置には居住要件などがあるため、投資用物件で同じ軽減率を前提にしません。

したがって「フルローンだから貯金を使わない」ではなく、購入諸費用を払った後にいくら残るかを見ます。

100%融資と90%融資を同じ条件で比較

ここからは、融資率だけを変えた説明用ケースです。実在する金融商品の提示金利ではありません。

前提は、物件価格3,000万円、返済期間35年、年2.0%、元利均等、ボーナス返済なし、金利が全期間変わらないものとします。

比較項目100%融資 / 90%融資
借入額100%:3,000万円
90%:2,700万円
頭金100%:0円
90%:300万円
毎月返済100%:約99,379円
90%:約89,441円
月返済の差約9,938円
10年後の残債100%:約2,345万円
90%:約2,110万円
10年後残債の差約234万円
35年間の利息合計100%:約1,174万円
90%:約1,057万円
利息合計の差約117万円

※すべて説明用の固定金利計算です。実際の投資用ローンが変動金利なら、将来の返済額・残債・総利息はこの通りにはなりません。

100%融資では購入時の300万円を手元に残せます。一方で、同じ金利・期間なら毎月返済と残債、支払利息は増えます。

つまり比較すべきなのは「頭金を払うか・払わないか」だけではなく、300万円を手元に残す価値と、増える借入負担のどちらが自分の家計に重要かです。

頭金を入れないメリットもある

フルローンを一律に悪い選択とするのも適切ではありません。

頭金として現金を使うと、借入額は減りますが手元流動性も減ります。投資用不動産では、購入後にも空室、原状回復、設備交換、管理費・修繕積立金の改定、税金などに現金が必要です。

例えば、300万円を頭金へ入れるケースと、300万円を手元に残して予備資金へ回すケースでは、次のように評価軸が違います。

選択主な効果と確認点
頭金を入れる借入・返済・残債・利息が減る。一方、購入直後の手元現金も減る
頭金を入れない現金を残せる。一方、返済・残債・利息が増え、売却時に残債が重くなりやすい

合理的かどうかは、頭金を入れなかった資金を本当に残せるかでも変わります。フルローンで浮いた現金を生活費や別の支出に使い切り、空室・修繕時の予備資金が残らないなら、フルローンの流動性メリットは小さくなります。

手元資金を残したままストレス試算する

融資率を決める前に、購入後の現金余力を比較します。

最低でも、次の条件を重ねたときに返済を続けられるか確認します。

ストレス確認すること
空室1〜2か月家賃が入らなくても、ローンと固定費を払えるか
設備交換給湯器・エアコン等の交換が空室と重なっても対応できるか
管理・修繕増管理費・修繕積立金が増えても年間CFを維持できるか
金利上昇変動金利なら、返済増を入れても家計から補填できるか
家賃低下現在賃料を固定せず、下落ケースでも保有できるか

頭金を多く入れてローンを小さくしても、手元資金がほぼ0円になるなら別のリスクが生まれます。

そのためSmart Selectでは、融資率だけを最小化するのではなく、購入後の手元資金と年間ストレスCFを同時に確認します。

フルローンほど売却時の残債確認が重要

借入額が大きいほど、同じ返済期間・金利なら途中時点の残債も大きくなります。

説明用ケースでは、10年後の残債は100%融資で約2,345万円、90%融資で約2,110万円です。差は約234万円あります。

売却時に見るのは、物件価格ではなく売却後にローンを返して現金が残るかです。

フルローンだから必ず売却で損をするわけではありません。ただし、購入直後の残債比率が高いため、価格が想定より伸びない・下がる場合に追加資金が必要になる可能性を早い段階から確認します。

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営業担当へ確認する10項目

「頭金0円・フルローン」と提案されたら、契約前に次を資料で確認します。

  1. 融資率物件価格の何%を借りる前提か確認する
  2. 担保評価100%融資が金融機関の担保評価内なのか確認する
  3. 購入時自己資金頭金以外を含め、引渡しまでに現金がいくら必要か確認する
  4. 融資対象外費用登記・税・保険・手数料等のうち借りられない項目を確認する
  5. 購入後の現金諸費用支払い後も手元にいくら残るか確認する
  6. 毎月返済差100%融資と頭金を入れたケースの返済額を比較する
  7. 10年後の残債途中売却を想定し、5年・10年後の残債を確認する
  8. 金利上昇時CF変動金利なら返済増後の年間手残りを確認する
  9. 空室・修繕余力空室と設備交換が重なっても払える現金を残す
  10. 売却時の出口残債・売却費用・税金を引いて手出しが必要になる価格を確認する

Smart Selectの判断方法

フルローンかどうかだけでは判定しません。

判断する順番は次の5つです。

  1. 物件価格が相場に対して妥当か
  2. 購入諸費用を払った後も現金が残るか
  3. 100%融資で増える返済と残債を許容できるか
  4. 空室・修繕・金利上昇時にも保有できるか
  5. 途中売却でも残債を処理できるか

100%融資でもこの5点が成立し、手元資金を戦略的に残せるなら選択肢になり得ます。逆に、100%融資にしないと諸費用も払えない、購入後の予備資金がほぼ残らない、売却時の残債余力が小さい場合は、融資が通ることと投資として継続できることを分けて考えます。

現在の営業資料が「頭金0円」という月次収支しか示していない場合は、自分の条件で融資率と保有期間を変えて再計算してください。

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よくある質問

フルローンなら自己資金0円で始められますか?

必ずしもそうではありません。購入価格を100%借りても、融資対象外の諸費用があれば自己資金は必要です。「頭金0円」と「購入時現金0円」を分けて確認します。

購入価格の100%を借りられる銀行はありますか?

あります。オリックス銀行は2026年8月確認時点で、申込内容によって購入価格の100%ローンを取り扱える場合があると案内しています。ただし原則として同行の担保評価額の範囲内です。これは同行の現行例で、他の金融機関へ一般化はできません。

頭金はできるだけ多く入れた方が安全ですか?

借入負担は減りますが、現金も減ります。空室・修繕・設備交換に対応する手元資金まで頭金へ入れないよう、購入後の現金残高と合わせて判断します。

フルローンは売却しにくいですか?

融資方法そのものが売却を妨げるわけではありません。ただし借入額が大きい分、途中時点の残債も大きくなりやすいため、売却後手取りで残債を返せるかの確認が重要です。

まとめ

「頭金0円・フルローン」という言葉だけでは、資金負担の軽さは判断できません。

購入価格3,000万円を年2.0%・35年で借りる説明用ケースでは、100%融資と90%融資で毎月返済に約9,938円、10年後残債に約234万円、35年間の利息に約117万円の差が出ます。

一方、90%融資では購入時に300万円の頭金を使います。

確認するべきなのは、融資率の高低そのものではなく、購入諸費用を払った後の手元資金、保有中の返済余力、途中時点の残債、売却という出口まで含めて成立するかです。

※本記事のローン計算は比較方法を示す説明用仮定です。特定の金融商品の将来金利、融資可否、投資収益を予測・保証するものではありません。個別条件は金融機関の正式な審査・契約資料で確認してください。