毎月2万円の持ち出しは年24万円、3万円なら年36万円です。赤字額だけでは「売る・持つ」は決められません。

今の送金明細と返済予定表で月額を確認し、そこに含まれていない固定資産税・保険・設備交換などを追加します。残債と家賃を入れて、今売る場合と保有継続を比較する。無料・登録不要で手入力でき、税引前と税引後の概算は分けて確認できます。

月1万円・2万円・3万円の持ち出しは何年でいくら?

条件:月額は5年間一定。年払い・臨時費用、税効果、売却手残り、時間価値は未反映。

毎月の持ち出し1年間5年間10年間
1万円12万円60万円120万円
2万円24万円120万円240万円
3万円36万円180万円360万円
5年間の持ち出しを月額別に比較
月1万円60万円
月2万円120万円
月3万円180万円

月額×12か月×5年。月額一定、未計上費用・税効果・売却手残りを除く。

売るか迷う場合は、「今売る手残り」と「これからの累積収支+将来売る手残り」を同じ期間・税の扱いで比較します。過去の持ち出しは投資全体の利益を振り返るときに含めますが、これからの選択肢の差額には二重に加えません。ローン元本の減少も、将来の残債を差し引いた手残りに反映済みなら再度足しません。

売却手残りの内訳は残債・売却費用を引く計算手順、年間費用の集計はキャッシュフローの計算例で確認できます。

月額表示から年間負担へ
  1. 通常月の収支 × 12家賃からローン返済と毎月の費用を引く。
  2. 年払い・臨時費用を追加税金、保険、空室、修繕などの未計上分を加える。
  3. 税効果は別に反映適用できる税効果を確認し、持ち出しがどれだけ残るかを見る。

将来の支出に備える積立額と、すでに支払った費用を二重に数えないでください。

不動産投資の持ち出しは、毎月の収支表だけでは分からない

給与や預金から補っている金額を、年間で集計してください。 家賃の入金とローン引き落としの差に、別払いの固定資産税・保険・設備交換などが含まれているか確認します。

契約時の「月々1万円」という説明は、現在の実際の持ち出し額と一致するとは限りません。この記事で説明に抜けた費用を確認し、金額がそろったら年間収支と累積赤字の計算へ進んでください。

購入時の自己資金は、投資全体の振り返りで別に確認する

月次収支だけを見ると、購入時に口座から出た現金が抜け落ちます。

購入時には、物件や融資条件によって、頭金のほか、仲介手数料、登記関係費用、ローン関係費用、保険料、税金の精算等が発生することがあります。どこまで融資に含まれるかも契約によって異なります。

投資全体を振り返る表では、最初に次の行を作ります。今売る場合とこれから保有を続ける場合を比べる表では、すでに支払った自己資金を両方の選択肢へ再び加えません。

購入時に確認資料で見る場所
頭金・自己資金売買代金と融資実行額の差
購入諸費用資金計画書・諸費用明細
融資されない費用金融機関の融資対象・実行条件
購入直後の予備資金引渡し後に必要な修繕・募集・設備費等

「月1万円」でも、購入時に大きな自己資金を使う場合と、自己資金が少ない場合では、投資全体の資金効率は同じではありません。

送金明細と返済予定表から月次収支を分解する

まず現在の送金明細と返済予定表で、実際に入出金した項目を確認します。契約時の営業資料は、現在の収支に含まれない費用や前提を探す補助資料です。次の表へ現在の明細を入れます。

月次項目入力額
家賃収入+100,000円
ローン返済−90,000円
管理費・修繕積立金−15,000円
賃貸管理料等−5,000円
月次収支−10,000円

この表だけなら、年間の持ち出しは12万円に見えます。

次に、固定資産税・都市計画税、保険、空室期間、募集時の広告料やフリーレント、原状回復、設備交換、管理費・修繕積立金の将来改定が月次欄に含まれているかを確認します。

含まれていない項目は、年単位・発生時単位で別に足します。

年払い・空室・設備交換を年間へ足す

毎月の表にない年払い・臨時費用を追加します。

年間項目説明用金額
月次持ち出し−120,000円
固定資産税等−80,000円
保険−10,000円
空室引当−50,000円
修繕・設備交換引当−50,000円
年間キャッシュフロー−310,000円

※空室引当は月10万円の家賃で年間15日分。修繕・設備交換引当は資金準備額。

購入から売却までの負担を5段階で確認
段階集計するお金
1.購入時頭金・購入諸費用・融資対象外の自己負担
2.月ごと入金家賃から元利返済・管理費等を控除
3.年間税金・保険・空室・修繕等を追加。未使用の予備費は実際の支出と分ける
4.税引後所得税・住民税の増減を別計算して反映
5.売却まで購入時自己資金を差し引き、累積税引後収支と残債控除後の売却手残りを加算
月1万円の赤字を、年間で計算し直す
通常月の赤字 × 1212万円/年
年払い・空室・修繕等を追加31万円/年

家賃月10万円。後者は税金8万円、保険1万円、空室・修繕等各5万円を加算。税効果は未反映。棒は持ち出し額の大きさ。

この例では、営業資料の「月1万円」と、年間の現金負担31万円を12で割った「約2.58万円/月相当」には差があります。

重要なのは31万円という数字ではなく、自分の物件の固定資産税、保険料、管理契約、過去の空室、設備履歴、修繕計画を入れて同じ計算をすることです。

元本返済・税務上の赤字・現金収支を分ける

不動産投資では、銀行口座のキャッシュフローと税務上の不動産所得は同じ数字になりません。

国税庁は、不動産所得を「総収入金額 − 必要経費」で計算し、必要経費の例として固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などを挙げています。

ローン返済では、利息と元本を分けて考える必要があります。賃貸建物等を取得するための借入金利子は不動産所得の計算に関係しますが、国税庁は借入金返済額のうち元本に相当する部分は必要経費にならないと説明しています。

一方、元本返済も銀行口座からは現金が出ます。したがって、

見る表扱い
キャッシュフローローン返済額の全額を現金流出として見る
税務上の不動産所得元本返済は必要経費にせず、利息等を税務ルールに沿って確認する
資産・出口元本返済で減った残債を売却時の手残り計算へ反映する

という3つに分けます。

また、不動産所得に赤字が出た場合でも、赤字の全額を必ず給与所得などと損益通算できるわけではありません。国税庁は、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する一定部分などは損益通算の対象外としています。

年間キャッシュフロー−31万円、所得税・住民税への影響+18万円なら、税効果反映後の現金収支は−13万円です。

−31万円の現金流出が、18万円の税効果によって利益13万円になるわけではありません。 税効果を反映しても、この例では現金が13万円減っています。

税効果は所得、必要経費、減価償却、土地・建物の内訳、保有状況等によって変わるため、営業資料の還付見込みを固定値として長期間延長しません。

月2万円の赤字なら、退去した年に必要な現金も別に計算する

通常年は月2万円・年24万円の持ち出し。月家賃10万円で、空室2か月、設備交換15万円、追加募集費5万円が重なると、必要な現金はどう変わるでしょうか。

通常年から追加するもの金額
通常年の持ち出し24万円
空室による家賃減収10万円×2=20万円
設備交換15万円
追加募集費5万円
合計64万円

通常年の24万円に空室・設備交換がまだ含まれていない前提です。管理委託料が家賃連動なら空室時に減る分を調整し、税効果や契約精算は別に反映します。同じ費用を二重に積み上げないようにします。

この例なら月2万円を払えるだけでなく、年64万円を賄い、支払月まで現金を用意できるかを確認します。家計の医療費や失業に備えた資金を物件の予備費と兼用すると、同時に必要になったとき足りなくなります。

Smart Selectでは、全国共通の「何か月分あれば安全」という額を置きません。設備の年式、修繕計画、借入通知から、通常年・退去年・値上げ年の最大不足を自分の預金と照らし合わせます。

家賃・金利・修繕を同時に悪化させる

年間−31万円を基準に、条件を悪化させます。

条件年間CF
通常ケース−31万円
家賃5%下落−37万円
返済額が月1万円増加−43万円
家賃5%下落+返済月1万円増−49万円
さらに修繕等10万円を追加−59万円

ストレス条件は家賃5%下落、返済額月1万円増、修繕10万円です。

金利についても「何%なら一律に危険」とは決めません。現在の返済額、金利見直し条件、年収・家計、保有戸数、手元資金をもとに、返済額が増えた場合でも維持できるかで判断します。

売却時の手残りと譲渡所得を混同しない

出口では、2つの計算を分けます。

1. 売却時に口座へ残る現金

ここでローン残債を差し引くのは、売却代金から借入を返済した後に手元へいくら残るかを見るためです。

2. 税金を計算するときの譲渡所得

国税庁は、土地・建物の譲渡所得を、売却した金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するとしています。建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

ローン残債は、譲渡所得の計算で取得費の代わりに差し引くものではありません。

この2つを混ぜると、「売却時に現金が残らない=譲渡所得もゼロ」「残債が多いから税金も少ない」といった誤解につながります。

投資全体の現金収支は、次の形で確認します。

これは投資判断のための現金収支の整理式で、税務上の所得計算式ではありません。

保有中に確認する10項目

現在の送金明細と返済予定表を基に、収支表に次の費用が含まれているか、一つずつ照合してください。契約時の資料は、現在の条件との差を確認するために使います。

  1. 家賃現在賃料・査定根拠・家賃下落ケースを確認する
  2. ローン金利・返済額・見直し条件・残債推移を確認する
  3. 管理費現在額・改定履歴・将来の改定予定を確認する
  4. 修繕積立金現在額・長期修繕計画上の将来額・一時金を確認する
  5. 賃貸管理料料率・最低額・更新等の追加費用を確認する
  6. 税・保険固定資産税等の直近実額、保険料、更新時期を確認する
  7. 空室・募集空室日数・広告料・フリーレント・原状回復を確認する
  8. 修繕・設備設備履歴・交換時期・オーナー負担を確認する
  9. 購入時資金頭金・購入諸費用・融資対象外の自己負担を確認する
  10. 出口残債推移・売却価格・売却費用・税金を確認する

よくある質問

マンション投資で月2万円・3万円の持ち出しがある場合、売るべきですか?

月額だけでは決められません。月2万円は年24万円、月3万円は年36万円です。未計上費用と税効果を別に確認し、これから保有する間の累積収支と将来の売却手残りを合算して、今売る場合の手残りと比較します。

毎月1万円の赤字なら、年間12万円だけ見ればよいですか?

いいえ。毎月の収支に含まれない年払い・臨時費用を足し、購入時自己資金と売却時の現金手残りも別に確認します。

税金が還付されるなら、持ち出しは問題ありませんか?

税効果とキャッシュフローは別の数字です。不動産所得の赤字でも損益通算できない部分があり、税効果は所得や必要経費、減価償却等によって変わります。

元本返済は資産になるので、現金収支から除いてよいですか?

元本返済で残債は減りますが、その月には現金が必要です。返済継続性を見る表では現金流出として扱い、残債減少の効果は出口で別に評価します。

月々の持ち出しがある物件は必ず悪い投資ですか?

一律には言えません。購入時自己資金、保有中の累積税引後キャッシュフロー、残債の減少、売却時手残りまで合算して判断します。

次にすること

持ち出しが続く場合と、売る場合を比べる

家賃・毎月の費用・ローン残高を入力し、保有中の収支と売却時の手残りを確認します。

保有中・売却を考えている方優先

今売る手残りと、保有を続ける場合を比べる

売却価格の幅、残債、家賃・費用を入力し、今・5年後・10年後を比較します。

売る・持つを比較する

登録不要で試算できます。税引後の概算には、取得費・減価償却など税額計算に必要な条件も入力してください。