「年金代わり」になるかは、退職時の残債と、費用を引いた家賃で判断します。

完済後も管理費・税金・修繕費はかかります。退職する年から、いくら使えるお金が残るか確認してください。

老後の収入を見る3つの確認
  1. 退職する年その年のローン残債と返済額を確認。
  2. 完済する年退職後も返済が続く期間を確認。
  3. 完済後に残る家賃管理・修繕・空室・税金などを引いて計算。

家賃や費用が将来も同じとは限りません。建物の老朽化も考慮します。

「35年後」ではなく、自分の年齢で見る
  1. 35歳購入・返済開始3,000万円を35年返済
  2. 65歳退職を想定残債約567万円・返済は継続
  3. 70歳ローン完済管理・修繕・税・空室負担は残る
65〜70歳退職後も5年間返済本文条件では月約9.94万円

3,000万円・年2.0%一定・35年・元利均等。

35歳で35年ローンなら完済は70歳

日本年金機構によると、老齢基礎年金は受給資格期間を満たす場合、原則65歳から受け取れます。年金を受け取り始める年のローン残債と返済額を、次の表で確認します。

確認する数字計算結果
購入年齢35歳
借入額3,000万円
金利年2.0%
返済期間35年
月返済約9.94万円
65歳時点の残債約567万円
完済年齢70歳

計算条件: 元利均等、ボーナス返済なし、金利年2.0%一定。

65歳時点でも約567万円の残債がある

表の返済条件では、65〜70歳の年間返済は約119万円です。家賃月10万円とほぼ同額で、管理・修繕・税・保険・空室費用は別に必要です。

ローン完済後も家賃10万円がそのまま残るわけではない

ローンを完済すると返済額はゼロになりますが、賃貸経営の支出はゼロになりません。

完済後の収支条件: 家賃月10万円。

項目年間金額
家賃収入120万円
管理費・修繕積立金▲18万円
賃貸管理費▲6万円
固定資産税等▲8万円
損害保険▲1万円
空室・設備交換への資金準備▲10万円
ローン完済後の現金残額約77万円/年

差引きは年77万円、月平均約6.4万円です。

また、表の「空室・設備交換への資金準備」は家計上の予備資金として置いたもので、積み立てただけで税務上の必要経費になるという意味ではありません。

国税庁は不動産所得を「総収入金額-必要経費」で計算し、主な必要経費として固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費を挙げています。

税務上の所得と、銀行口座に残る現金は同じではありません。

公的年金と家賃収入は性質が違う

「年金代わり」という言葉は分かりやすい一方、公的年金と不動産の家賃収入には大きな違いがあります。

比較項目公的年金と家賃収入の違い
受給・収入の仕組み公的年金:法令上の制度に基づく
家賃収入:入居者との賃貸借・市場需要に依存
開始時期公的年金:老齢基礎年金は原則65歳
家賃収入:ローン返済中でも入るが、返済・経費がある
金額公的年金:制度に基づき改定
家賃収入:家賃改定・空室・滞納等で変動
維持費公的年金:物件維持費なし
家賃収入:管理・修繕・税金・保険等が必要
元本・資産価格公的年金:不動産価格リスクなし
家賃収入:売却価格が変動
手間公的年金:原則として賃貸経営不要
家賃収入:管理会社との契約・修繕・売却判断が必要

2026年度の老齢基礎年金満額は、昭和31年4月2日以降生まれの場合、月70,608円です。ただし会社員の実際の公的年金額は厚生年金の加入履歴や報酬等で異なり、この金額だけが老後の年金総額ではありません。

したがって、家賃収入を「公的年金の代替」と置くより、老後収入を補完する一つの資産として評価する方が実態に近くなります。

完済時の築年数まで見る

35年後にローンが終わるとしても、建物は35年間年を取ります。

  • 新築を35歳で購入 → 70歳の完済時に築35年
  • 築10年の中古を35歳で購入 → 70歳の完済時に築45年

築年数が進めば必ず家賃が下がる、必ず売れなくなるという意味ではありません。

ただし、設備更新、大規模修繕、管理費・修繕積立金の見直し、賃貸需要、売却時の買い手の融資条件など、当初と同じ前提を置き続けることはできません。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、望ましい計画期間を30年以上とし、大規模修繕工事を2回含む期間を基本としています。

「ローン完済=支出が減る時期」だけでなく、完済時点で建物がどの状態にあるかも確認します。

老後収支は3つのストレスで確認

営業資料の標準ケースだけでなく、最低でも次の3ケースを並べます。

ケース前提・確認すること
標準家賃:現在と同水準
管理・修繕等:現在の想定
確認:基本収支
家賃低下家賃:▲10%
管理・修繕等:現在の想定
確認:老後の手取りがどこまで減るか
支出上昇家賃:現在と同水準
管理・修繕等:+20%
確認:修繕・管理費上昇への耐性

さらに、1〜2か月の空室やエアコン・給湯器等の設備交換が重なった年に、年金や生活費から補填しなくても保有できるかを確認します。

現在の家計に余裕があることと、30年後も余裕があることは別問題です。

保有継続だけでなく売却できるかも確認

老後の選択肢は「ずっと持ち続ける」だけではありません。

途中で売却する、完済前に売却する、完済後に売却するという選択肢もあります。

そのため購入前に、少なくとも次の式を確認します。

売却時の手出しゼロライン = ローン残債を売却後手取りで返済できる価格

将来の売却価格は確定できませんが、残債の減り方と現在の周辺取引価格を並べることで、「保有し続けるしかない設計」になっていないかを確認できます。

営業から提示された販売価格を5つの数字で検証する

投資用マンションを売却するときの確認事項

営業担当へ確認する10項目

契約前に、次の数字を資料で確認します。

  1. 65歳時点の残債私が65歳のとき、ローン残債はいくら残る前提か確認する
  2. 完済時の年齢ローン完済時に自分が何歳になっているか確認する
  3. 完済時の築年数完済時に物件が築何年になっているか確認する
  4. 完済後の管理・修繕完済後も年間いくらの管理費・修繕積立金がかかる前提か確認する
  5. 完済後の手取り固定資産税・保険・賃貸管理費を含めた完済後の年間手取りを確認する
  6. 家賃10%低下家賃が10%下がった場合の65歳・70歳時点の収支を確認する
  7. 管理・修繕20%増管理費・修繕積立金が20%増えた場合の収支を確認する
  8. 空室時の持ち出し1〜2か月空室になった年の持ち出し額を確認する
  9. 65歳時点の売却65歳で売却した場合の想定残債と売却費用を確認する
  10. 年金代わりを外す「年金代わり」というメリットを外しても投資単体の収支が成立するか確認する

65歳で退職して70歳完済なら、間の5年間をどう払うか

表と年齢軸を合わせ、退職から完済までの支払いを別期間として確認します。

時期用意する試算
退職から完済まで年金等の家計収入に、返済後の物件収支を加えた資金繰り
完済後家賃から管理修繕・税・保険・空室・設備交換を引いた額
途中で売る場合その年の売価、残債、売却費用、税金を引いた手残り

必要な追加資金=毎月の赤字額×60か月

2万円×60か月=120万円

繰上返済には退職金等の現金を使います。生活費・医療費・修繕予備費を残せるかも確認します。

Smart Selectでは、家賃を公的年金と同じ確実な収入とは扱いません。退職時の残債、完済までの不足、完済後の手取りを一枚にし、売る場合も含めて家計へ組み込みます。今の月額返済が払えることと、退職後に持ち続けられることは別です。

よくある質問

不動産投資は年金代わりになりますか?

家賃収入が老後の収入源になる可能性はありますが、公的年金と同じ性質ではありません。ローン完済後も支出は続き、家賃・空室・売却価格も変動します。

35年ローンなら65歳までに完済できますか?

借入時年齢次第です。35歳で35年ローンなら完済は70歳です。計算結果では65歳時点でも約567万円の残債があります。

完済後は家賃が丸ごと利益になりますか?

なりません。管理費・修繕積立金、賃貸管理費、税金、保険、修繕、空室等を差し引いて確認します。

65歳時点でローンが残っていても問題ありませんか?

一律には判断できません。退職後の収入、家賃、手元資金、金利条件、修繕・空室を含め、返済が続けられるかを確認します。

公的年金と家賃収入を合算して考えてよいですか?

老後の収入計画として合算すること自体はできますが、性質は分けて考えます。公的年金は制度に基づく給付で、家賃収入は賃貸需要・物件状態・経費等で変動します。