定額法と定率法は、建物などの取得費をいつ経費にするかを決める方法です。「定率法は廃止された」という説明だけでは、対象と時期が抜けています。現在のマンション購入と、過去に取得した資産を分けて見ましょう。
違うのは、費用になる時期
| 方法 | 基本の計算 | 費用になる時期 |
|---|---|---|
| 定額法 | 取得価額 × 償却率 | 原則として各年同額 |
| 定率法 | 期首の未償却残高 × 償却率 | 初期が大きく、その後小さくなる |
定率法の「未償却残高」は、取得価額から前年までの償却費を引いた金額です。定率法でも、計算額が所定の償却保証額を下回った後は、改定取得価額に改定償却率を掛ける方法へ移り、毎年同額になります。
定額法も、買った年・売った年の使用月数や最後の帳簿価額1円の処理によって、すべての年が完全に同額とは限りません。国税庁 No.2106
100万円・10年の資産で比べる
取得価額100万円、耐用年数10年、各年12か月業務使用の例です。定額法の率を0.100、定率法の率を0.200として比較します。方法の仕組みを見るための例であり、現在購入するマンション本体に定率法を選べるという意味ではありません。
図は左右にスクロールできます
| 年 | 定額法 | 定率法 |
|---|---|---|
| 1年目 | 100,000円 | 200,000円 |
| 2年目 | 100,000円 | 160,000円 |
| 3年目 | 100,000円 | 128,000円 |
| 4年目 | 100,000円 | 102,400円 |
| 5年目 | 100,000円 | 81,920円 |
| 6年目 | 100,000円 | 65,536円 |
| 7〜9年目(各年) | 100,000円 | 65,536円 |
| 10年目 | 99,999円 | 65,535円 |
| 累計 | 999,999円 | 999,999円 |
この定率法の保証率は0.06552、改定償却率は0.250です。7年目は残高262,144円×0.200で計算すると保証額65,520円未満になるため、262,144円×0.250=65,536円へ切り替えます。
早く経費になることと、経費総額が増えることは別です。 同じ税率が続く単純な例なら、主に税負担が生じる時期の差です。実際の税率変動や売却があれば、結果は変わります。
建物と設備では、変更時期が違う
| 取得時期 | 建物本体 | 建物附属設備・構築物 |
|---|---|---|
| 1998年4月1日〜2007年3月31日 | 旧定額法のみ | 当時の選定・旧制度に従う |
| 2007年4月1日〜2016年3月31日 | 定額法のみ | 定額法・定率法の選定対象 |
| 2016年4月1日以後 | 定額法のみ | 定額法のみ |
根拠:国税庁 No.2100「償却方法」。通常の購入についての整理です。1998年3月以前の建物などは過去の適用方法を確認します。2007年と2012年には償却計算自体にも改正があり、古い資産を現在の率で単純に再計算できません。
判断の基準は、原則としてその人がいつ取得したかです。1990年築の中古マンションを2026年に購入するなら、築年が古いことだけで旧定率法を使うことはできません。相続・贈与等の扱いは通常の売買と分けて確認してください。
なぜ建物附属設備も定額法になった?
財務省は2016年度の見直しを、法人税の課税ベースを広げながら税率を引き下げる改革の一部として説明しています。対象は建物と一体で整備される設備や、建物のように長期にわたって安定的に使う構築物です。財務省「直近の法人税改革・課税ベースの拡大」
初期に大きな償却費を計上する定率法から定額法へ移すと、取得初期に所得から差し引く額が小さくなります。こうした課税ベース側の見直しを、税率引下げと組み合わせたものです。ここは制度の背景の説明であり、個人の税率まで同じように下がったという意味ではありません。個人についても、設備等の取得時期による方法の制限は国税庁の所得税の説明で確認できます。
したがって、「マンション節税の不正が多かったから定率法が全面禁止された」といった説明にはなりません。機械装置など、現在も定率法を選定できる資産はあります。
営業資料の償却方法を確かめる
現在購入する物件の試算に「建物:定率法」「設備:定率法」とあるなら、資産区分と取得日を示して訂正・説明を求めてください。「設備」と書いてあっても、税務上は建物附属設備なのか器具備品なのかで扱いが違うことがあります。
過去に買った物件は、固定資産台帳と過去の申告書で方法を確認します。節税額を大きく見せるために毎年都合よく方法を入れ替えるものではありません。
よくある質問
今買う中古マンションに定率法を使えますか?
現在購入する建物と建物附属設備には定額法を適用します。建築年が古いことだけを理由に定率法を選べるわけではありません。
定率法の方が最終的な経費総額は多いですか?
同じ取得価額の有形資産を通常償却して1円を残す例では、累計の償却費は同じです。主に計上する時期が違います。