仲介と買取は、どちらも不動産会社へ相談する方法ですが、買主・価格の決まり方・売却期間・契約条件が異なります。

査定額だけを横に並べると、仲介の「売り出し価格」と買取の「購入提示額」を比較してしまうことがあります。まず数字の意味をそろえ、最後にローン残債や費用を差し引いた手残りで比べます。

先に結論:仲介と買取は比較する数字が違う

仲介会社が提示する査定額は、「この価格なら売れる可能性がある」という媒介価格の意見です。売り出し後に買主が見つかり、交渉を経て成約するとは限りません。

一方、買取は会社自身が買主となるため、提示額が契約条件と結びつきやすくなります。ただし、再販売までの期間、修繕、空室、資金調達などの負担を見込んで価格が算定される場合があります。

したがって、次のように比較します。

比較するもの仲介買取
買主会社が探す第三者買取会社
価格の種類査定額・売り出し価格・成約価格買取提示額・契約価格
売却期間買主探しと交渉に左右される条件合意後は短くしやすい
主な負担内覧、販売活動、価格調整価格、契約条件、引渡し条件
確認する資料成約事例、販売計画、媒介契約買取根拠、契約書、費用負担

仲介と買取の違い

仲介

仲介では、売主と第三者の買主を不動産会社がつなぎます。投資用マンションでは、買主が投資家や法人になることもあるため、現在の賃料、入居状況、管理費・修繕積立金、ローンの有無などが価格判断に影響します。

依頼前に、次の内容を確認します。

  • どの成約事例を査定に使ったか
  • 募集価格と成約価格を区別しているか
  • 想定買主と販売チャネルは何か
  • 売り出し価格を下げる条件と時期
  • 媒介契約の種類、REINS登録、報告方法
  • 仲介手数料とその他の費用

国土交通省は媒介契約や宅建業者が受けられる報酬について案内しています。契約書に記載された報告方法、契約期間、解除条件を確認してください。

買取

買取では、会社が直接買主になります。買主探しや内覧の負担を抑えやすい反面、買取会社が将来売却する価格と費用を前提に提示額が決まるため、仲介の査定額と単純に比較できません。

次の条件を確認します。

  • 買取価格の算定根拠
  • 契約から決済・引渡しまでの日程
  • 仲介手数料や調査費用の有無
  • 修繕、残置物、原状回復の負担
  • 賃貸借契約、敷金、管理契約の引継ぎ
  • 契約不適合責任や免責特約
  • 価格変更や契約解除の条件

「早く売れる」ことだけでなく、売却後の資金繰りと契約上の負担を確認します。

査定額を見るときの確認項目

査定額は、少なくとも次の4種類に分けて記録します。

  1. 査定額
  2. 売り出し価格
  3. 成約価格
  4. 買取提示額

国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産の取引価格などを確認できます。ただし、同じ地域や面積でも、築年、階数、賃料、空室、管理状態、取引時期によって価格は変わります。

査定資料に次の説明がなければ、金額だけで判断しません。

  • 比較した物件の所在地・築年・面積・階数
  • 比較事例が募集価格か成約価格か
  • 賃料と利回りをどう評価したか
  • 空室、滞納、サブリースの扱い
  • 管理費・修繕積立金・一時金の扱い
  • 想定売却期間と値下げのルール
  • 仲介手数料等を引いた後の手残り

高い査定額が危険になるケース

査定額が高くても、販売根拠が弱い場合があります。

  • 成約事例ではなく募集価格だけを使っている
  • 想定買主が具体的でない
  • 売却期間を短く見積もっている
  • 値下げ条件が書かれていない
  • 買取価格と仲介査定額を同じ表で比較している
  • 税金やローン残債を含めて「利益」と説明している

手残りを同じ式で計算する

売却方法を比較するときは、価格だけでなく、同じ式で手残りを計算します。

売却後の手残り = 売却価格 − ローン一括返済額 − 売却費用 − 税金等

売却費用には、仲介手数料、印紙税、抵当権抹消関連費用、管理契約の解約費用などが含まれる場合があります。個別の費目や金額は契約書・金融機関・専門家へ確認します。

なお、税務上の譲渡所得は現金の手残りとは別の計算です。

課税譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除

投資用マンションの取得費や減価償却、譲渡費用の詳細は、譲渡所得税の計算方法を確認してください。

比較例

仮に次の条件で比較します。

項目仲介買取
売却価格2,900万円2,700万円
ローン一括返済額2,500万円2,500万円
売却費用120万円30万円
税金等個別計算個別計算
税引前の手残り280万円170万円

この例では、仲介の方が税引前の手残りは大きくなります。ただし、仲介で6か月かかる場合の空室・管理費・金利・値下げリスク、買取の契約条件を同じ前提で入れ直す必要があります。数字は説明用の仮定であり、個別判断には使えません。

契約前に確認する条件

契約前には、価格だけでなく次の項目を比較表へ入れます。

  • 媒介契約の種類と契約期間
  • REINS登録の有無・時期
  • 販売活動と報告頻度
  • 買取価格の有効期限
  • 決済日・引渡し日
  • 賃貸借契約・敷金・管理契約の承継
  • 契約不適合責任・免責の範囲
  • 違約金・解除条件
  • 仲介手数料、印紙税、登記関連費用
  • ローン一括返済と担保抹消の条件

売却を急ぐ場合ほど、口頭の説明ではなく、査定書・媒介契約書・売買契約書・費用明細をそろえて確認します。

比較表に入れる項目

項目仲介会社A仲介会社B買取会社
数字の種類査定/売出し/成約査定/売出し/成約買取提示額
根拠事例
想定買主
売却期間
手数料・費用
ローン返済後の手残り
契約条件・免責
価格変更・解除条件

表を埋められない会社は、価格が高くても比較対象としての情報が不足しています。

依頼前チェックリスト

  • 査定額・売り出し価格・成約価格・買取価格を区別した
  • 成約事例の所在地・築年・面積・階数を確認した
  • 賃料、空室、管理費、修繕積立金を確認した
  • 売却費用を項目別に見積もった
  • ローン一括返済額と担保抹消条件を確認した
  • 税引前の手残りと譲渡所得を混同していない
  • 契約期間、違約金、解除条件を読んだ
  • 引渡し・賃貸借契約・敷金の扱いを確認した
  • 仲介と買取を同じ種類の数字として比較していない
  • 「今売る」と「持ち続ける」を同じ前提で試算した

よくある質問

仲介と買取はどちらが高く売れますか?

一律には決まりません。価格だけでなく、売却期間、費用、契約条件、空室や値下げのリスクを入れて手残りで比較します。

査定額が一番高い会社に依頼すればよいですか?

査定額は成約保証ではありません。査定根拠、想定買主、売却計画、費用、手残りまで確認してください。

ローン残債が売却価格を上回る場合は?

金融機関に一括返済額、担保抹消、不足額への対応を確認し、資金計画が決まる前に売買契約を締結しないようにします。

まとめ

仲介と買取は、価格だけでなく、買主、売却期間、費用、契約条件が異なります。

Smart Selectの判定:仲介の査定額と買取提示額をそのまま比べず、成約根拠・売却期間・費用・ローン残債を同じ表に入れ、売却後の手残りで比較する。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の不動産売却、税務、融資、法律上の助言ではありません。重要な判断は契約書類と最新制度を確認し、必要に応じて宅地建物取引士、税理士、司法書士、弁護士、金融機関等へ確認してください。