マンションを売るときの消費税は、売主の課税状況と土地・建物の内訳で変わります。
売却代金の10%が一律に納税額になるわけではありません。契約前に、税理士へ確認する材料をそろえましょう。
- 売るもの土地は非課税。建物は課税対象になり得る。
- 売主の状況課税事業者か、インボイス登録があるかを確認。
- 適用する計算方法・時期一般課税・簡易課税・特例の適用条件と売却時期を照合。
価格に含まれる消費税額と、実際の納税額は別です。
税込建物代金の内訳と納付税額は別
計算例:建物の税込代金を1,050万円、税率10%とした単純な内訳です。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 税抜建物代金 | 1,050万円÷1.10=約954.5万円 |
| 含まれる消費税等相当額 | 約95.5万円 |
| 最終納付額 | 約95.5万円とは限らない |
課税事業者か、仕入税額控除や申告方式をどう扱うかで納付額は変わります。土地代金とも分けます。
先に結論
消費税の確認は、次の順番で行います。
- 売買契約書で土地と建物の価格を分ける
- 建物の売却が事業用資産の譲渡に当たるか確認する
- 売主の基準期間・特定期間の課税売上高を確認する
- インボイス発行事業者の登録状況を確認する
- 売却年だけでなく、翌年・翌々年の判定まで税理士に確認する
消費税が関係する範囲
土地と建物は分けて考える
土地の譲渡は非課税です。一方、事業用に使用していた建物の譲渡は、売主が事業者として行う課税資産の譲渡に当たり、消費税の対象となる可能性があります。投資用マンションの売却価格全体に一律で消費税がかかるわけではありません。
| 確認対象 | 基本的な見方 |
|---|---|
| 土地部分 | 土地の譲渡は非課税 |
| 建物部分 | 事業用資産の譲渡として課税対象となり得る |
| 売主 | 個人でも不動産賃貸などの事業を行っていれば事業者となり得る |
| 契約書 | 土地・建物の内訳、税込・税抜表示、消費税額の記載を確認 |
建物代金に含まれる消費税等相当額と最終納付額の違い
ここでは、税込対価から税相当額を取り出す計算と、申告時の最終納付額を分けます。説明用の前提は次のとおりです。
| 前提条件 | 試算内容 |
|---|---|
| 売買総額 | 3,000万円 |
| 建物部分 | 売却契約上、合理的に区分した税込1,050万円 |
| 土地部分 | 1,950万円(非課税) |
| 売主 | 売却年に課税事業者である個人 |
| 税率 | 標準税率10% |
| 確認する額 | この例の説明値 | 結論 |
|---|---|---|
| 建物対価に含まれる税相当額 | 約95.5万円 | 売上税額側の出発点。最終納付額ではない |
| 一般課税の最終納付額 | この取引だけでは確定不能 | 課税期間全体の売上税額から仕入税額控除等を反映して計算 |
| 簡易課税・第4種の単純説明値 | 95.4545…万円 ×(1−60%)=約38.2万円 | 他の取引なし、適用要件を満たす仮定。実際の端数処理前 |
| 2割特例の単純説明値 | 約19.1万円 | 適用対象者・適用年である場合に限る |
| 3割特例の単純説明値 | 約28.6万円 | 適用対象者・適用年である場合に限る |
3,000万円 − 95.5万円を「売却後に残る金額」とは計算しません。 一般課税では、この売却を含む課税期間全体の売上に係る消費税額、課税仕入れに係る消費税額、課税売上割合、個別対応方式または一括比例配分方式、各種調整が必要です。非課税となる土地の譲渡は課税売上割合へ影響し得て、仲介手数料等の仕入税額も土地・建物への対応関係を確認します。簡易課税・2割特例・3割特例も別制度で、同時に重ねて使う計算ではありません。
長期譲渡か短期譲渡かは譲渡所得税の区分であり、消費税の課税判定とは別です。ローン残債、仲介手数料、減価償却、譲渡所得税も別計算にします。
売却時期と課税事業者判定
個人事業者の課税期間は原則として1月1日から12月31日です。原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になり、前々年が1,000万円以下でも前年1月1日から6月30日までの特定期間の課税売上高または給与等支払額の判定が影響する場合があります。
売却年に免税事業者だった人が大口の建物売却をしただけで、その取引が後から遡って課税取引へ変わるわけではありません。まず売却年について、基準期間・特定期間・インボイス登録・課税事業者選択の状況を確認します。
売却した年の建物部分の売却額などが課税売上高に含まれる場合、売却時期によって確認する年が変わります。
| 売却時期 | 確認する判定 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1月1日〜6月30日 | 翌年の特定期間へ含まれ得る | 売却翌年の判定と、売却翌々年の基準期間を確認 |
| 7月1日〜12月31日 | 翌年の特定期間には含まれない | 売却翌々年の基準期間には影響し得る |
この表は一般的な確認順序です。課税売上高の範囲、給与等支払額による判定、他の課税売上、課税事業者選択届出書、法人化の有無などにより結果が変わります。「1〜6月なら必ず翌年」「7〜12月なら必ず翌々年」とは限りません。個人事業者の申告・納付期限は原則として翌年3月31日です。
売却年が免税事業者である場合、将来の課税事業者判定に使う課税売上高は、受取額を1.1で割らず、課税資産の譲渡等の対価額をそのまま用います。この例の建物対価1,050万円を「1,050万円 × 100 ÷ 110 = 約954.5万円だから1,000万円以下」と判定してはいけません。
インボイス制度との関係
インボイスを交付するには、適格請求書発行事業者の登録が必要です。登録を受けている場合、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、原則として納税義務は免除されません。
ただし、インボイス制度が始まったことだけで、すべての個人売主が自動的に課税事業者になるわけではありません。登録の有無と、基準期間・特定期間の判定を分けて確認します。
買主が課税事業者の場合、建物部分についてインボイスの交付を求められることがあります。これは買主側の仕入税額控除の問題であり、売主の最終納付額とは別です。契約書に「税込」「税抜」「消費税相当額を含む」といった記載があるかも確認します。
買主側の仕入税額控除の経過措置
免税事業者等からの課税仕入れについて、国税庁の令和8年度改正特集の時系列図は、2026年9月30日までは80%、2026年10月から2年は70%、2028年10月から2年は50%、2030年10月から1年は30%、2031年10月以降は控除不可と示しています。
ただし、新しい割合は2026年10月1日以後に開始する課税期間等を基準に適用されるため、取引日だけでは決まりません。また、同一の免税事業者等から行った課税仕入れの税込合計が一課税期間(個人は暦年、法人は事業年度)で1億円を超える場合、超過部分は経過措置の対象外となります。
買主の課税期間開始日、取引日、仕入先別累計を税理士へ確認してください。
2割・3割特例と簡易課税を分ける
インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった対象者は、個人事業者では要件を満たせば2026年分まで2割特例、2027年分・2028年分は3割特例の対象となり得ます。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは対象外です。
簡易課税は別制度です。基準期間の課税売上高5,000万円以下等の要件と、原則として事前の届出を確認します。賃貸に使用していた固定資産の売却は第4種事業で、みなし仕入率は60%です。このため、前の95.5万円の例を他取引なしで単純化すると、2割特例約19.1万円、3割特例約28.6万円、簡易課税第4種約38.2万円ですが、いずれも法定端数処理前の説明値です。
売却前の確認項目
| 確認 | 質問・資料 |
|---|---|
| □ | 売買契約書に土地・建物の価格内訳があるか |
| □ | 売主は課税事業者か、免税事業者か |
| □ | インボイス発行事業者に登録しているか |
| □ | 売却年の課税売上高に何が含まれるか |
| □ | 売却翌年・翌々年の課税事業者判定はどうなるか |
| □ | 買主からインボイスを求められる可能性があるか |
| □ | 2割特例・3割特例・簡易課税の適用可否と期限 |
| □ | 消費税の納付資金をいつ確保するか |
「消費税がかかるか」だけでなく、契約価格に消費税相当額を含めるのか、別途精算するのか、申告・納付をいつ行うのかまで確認します。譲渡所得税とは判定も納付時期も別です。
よくある質問
投資用マンションを売却したら、必ず消費税がかかりますか?
必ずではありません。土地と建物の区分、売却年の売主の課税区分、基準期間・特定期間、インボイス登録、課税事業者選択の有無で判定が変わります。
7月以降に売却すれば、翌年の消費税は関係ありませんか?
翌年の特定期間には含まれませんが、売却翌々年の基準期間には影響し得ます。他の課税売上や届出状況も含めて確認してください。
インボイス制度が始まったので、個人売主も全員課税事業者ですか?
いいえ。インボイス発行事業者の登録を受けている場合は納税義務が免除されませんが、登録していない個人売主まで自動的に課税事業者になるわけではありません。
建物税込1,050万円に含まれる約95.5万円が、そのまま納付額ですか?
いいえ。約95.5万円は建物税込対価に含まれる消費税等相当額です。一般課税の納付額は課税期間全体の売上税額から仕入税額控除等を反映して計算するため、この売却1件だけでは確定できません。
簡易課税・2割特例・3割特例は同じ制度ですか?
同じではありません。簡易課税は基準期間の課税売上高や事前届出等を確認し、賃貸に使用した固定資産の売却は第4種事業として扱います。2割・3割特例はインボイス登録を機に課税事業者となった対象者の別制度で、適用年と要件を確認します。
既存記事との使い分け
投資用マンションの売却全体の確認事項は、投資用マンションの売却で気をつけたいこと10選で整理しています。
譲渡所得税の計算、取得費、減価償却、譲渡費用は、投資用マンションの譲渡所得税はいくら?を参照してください。
一次情報
- 国税庁 No.3240|個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税
- 国税庁 No.6125|国内取引の納税義務者
- 国税庁 No.6501|納税義務の免除
- 国税庁|インボイス制度について
- 国税庁|特定期間の判定
- 国税庁 No.6401|仕入控除税額の計算方法
- 国税庁 No.6505|簡易課税制度
- 国税庁 No.6509 Q&A|固定資産売却の事業区分
- 国税庁|令和8年度消費税・インボイス制度改正
売主区分・建物割合・判定時期を税理士へ確認する
この条件で判断する
投資用マンションの売却では、消費税を売却年だけの問題として扱いません。
土地・建物の内訳、課税事業者区分、インボイス登録、売却時期を確認し、翌年・翌々年の判定と納付資金まで整理してから契約します。
本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別の税務・投資判断を示すものではありません。制度適用は売主の事業形態、登録状況、取引内容により変わるため、契約前に税理士または税務署へ確認してください。