売却契約は、価格に加えて「解除・引継ぎ・決済」を確認してから署名します。

賃貸中の物件では、敷金や家賃、管理契約を誰がいつ引き継ぐかも書面で決めます。

署名前に見る3か所
  1. 解除条件と期限手付解除・融資特約などの条件、期限、違約金を確認。
  2. 賃貸・管理の引継ぎ賃貸借契約、敷金、家賃、管理契約の扱いを確認。
  3. 決済日の精算残債返済、抵当権抹消、費用と税金の精算を確認。

疑問が残る条項は、仲介会社や専門家へ確認してから契約してください。

契約の期限を1本の時系列へ写す

日付は説明用の仮定です。実際の契約書に記載された期限へ置き換えます。

  1. 10月1日:売買契約・手付金100万円を受領
  2. 10月20日:買主の融資承認期限
  3. 10月25日:手付解除期限
  4. 11月15日:残代金決済、残債返済、抵当権抹消、引渡し

融資否決、手付解除、違約解除は同じ条件ではありません。期限、通知方法、返還・放棄する金額を条項ごとに確認します。

先に結論

契約前に、最低限次の順番で確認します。

  1. 売買契約書と重要事項説明書を別々に読む
  2. 価格・手付金・決済日・引渡し日を確認する
  3. ローン特約、手付解除、違約金の条件を確認する
  4. 入居者・敷金・賃料・管理契約の承継を確認する
  5. 契約不適合責任、設備、修繕、残置物の扱いを確認する
  6. 決済日にローン完済・抵当権抹消・所有権移転ができるか確認する

売主が把握している不具合・告知事項を整理する

過去の出来事と、相手へ伝える内容を、契約前に整理します。 人の死に関する事情がある場合は、発生時期、場所、把握している事実、特殊清掃等の有無を仲介会社へ伝え、告知書の記載を確認してください。

国土交通省のガイドラインは、自然死などの扱いと、その他の事案を分けています。賃貸で示される「おおむね3年」を、売却の一律の告知期限には使えません。 質問された場合などの例外もあるため、期間だけで告知不要と判断しないでください。国土交通省|人の死の告知に関するガイドライン

事故物件の値下がり率を一律には置かず、事情を伝えたうえで査定条件を比較します。売主としての説明や契約責任に迷う場合は、仲介会社や弁護士へ確認してください。

契約前に確認する資料

契約書だけを見ても、物件の状態や費用負担は判断できません。売主が用意する資料と、仲介会社から受け取る資料を分けて整理します。

資料確認する内容
売買契約書案価格、手付金、決済日、解除、違約金、責任範囲
重要事項説明書権利関係、法令制限、管理規約、修繕、告知事項
賃貸借契約書賃料、更新、敷金、保証、解約、特約
管理委託契約書解約予告、違約金、管理資料の引継ぎ
管理組合資料長期修繕計画、総会議事録、修繕積立金、一時金
ローン資料一括返済額、返済日、抵当権抹消書類、手数料
設備・修繕資料故障履歴、修繕履歴、付帯設備、保証の有無

「口頭で説明を受けたから大丈夫」とせず、重要な条件は契約書、重要事項説明書、覚書、決済明細のいずれかに記録します。

売買契約書の確認項目

価格と支払い

項目確認ポイント
売買代金土地・建物の内訳、税込・税抜、代金の総額
手付金金額、支払日、解除時の扱い、違約金との関係
残代金決済日、振込先、同時履行する手続
精算金固定資産税、管理費、修繕積立金、賃料、敷金

物件に含まれるもの

「マンション一室を売る」と書かれていても、実際に引き渡す対象を確認します。

  • 専有部分
  • 所有権・共有持分
  • 駐車場・駐輪場の権利
  • エアコン、給湯器、照明などの付帯設備
  • 鍵、カード、管理関係書類
  • 入居者の賃貸借契約、敷金、保証金
  • 売主が保管している修繕・点検記録

付帯設備表や物件状況報告書に記載がない設備・不具合は、後から認識の違いになりやすい項目です。

解除条件と違約金

手付解除

手付解除は、相手方が契約の履行に着手する前までなど、契約書で定めた条件のもとで行う解除です。解除期限、解除方法、手付金の返還・放棄、履行着手の定義を確認します。

売主から解除する場合に手付金の倍額を返す内容になっていることがありますが、契約書の定めが優先されるため、金額だけで判断しません。

ローン特約

買主の融資が否決されたとき、契約を白紙解除できるローン特約が付く場合があります。売主側は、次の項目を確認します。

確認項目契約書で確認する内容
金融機関申込先、借入額、金利、融資期間
申込期限いつまでに買主が申し込むか
承認期限融資の可否をいつまでに確定するか
否決時白紙解除か、違約金が発生するか
買主の手続故意・過失による未申込や虚偽申告の扱い

違約金

契約違反があった場合の違約金は、金額だけでなく、どの行為が違反に当たるかを確認します。

  • 残代金の支払い遅延
  • 引渡しの遅延
  • 必要書類の未提出
  • 契約上の告知義務違反
  • 解除期限後の一方的なキャンセル
  • 入居者・敷金などの引継ぎ不備

賃貸中物件の承継条件

投資用マンションでは、建物を空室で渡すのか、入居者がいる状態で渡すのかによって契約内容が変わります。

項目確認する内容
賃貸借契約契約期間、更新、賃料、保証会社、特約
敷金・保証金金額、買主への承継、返還義務の負担者
賃料決済日前後の帰属、日割り、滞納分の扱い
管理会社管理委託契約の承継または解約、違約金
入居者通知所有者変更、振込先変更、個人情報の引継ぎ

特に敷金は、売主の手元に残っている現金と、買主が承継する返還義務を一致させる必要があります。決済明細に金額と承継方法を記載します。

決済・引渡しの確認

決済日は、代金を受け取る日ではなく、複数の手続を同時に完了させる日です。

決済日にそろえるもの残代金の入金 + ローン完済 + 抵当権抹消 + 所有権移転 + 鍵・書類の引渡し

決済前の確認

  • 金融機関から一括返済額を取得したか
  • 抵当権抹消書類の受領方法を確認したか
  • 司法書士の本人確認・委任状を準備したか
  • 管理費・修繕積立金・固定資産税を精算したか
  • 入居者・管理会社への通知時期を確認したか
  • 残置物、設備、鍵、書類を確認したか
  • 売却費用と納税資金を別に確保したか

売主側のローン残債が売却価格を上回る場合、追加資金、金融機関との調整、決済日の変更条件を契約前に確認します。

契約前チェックリスト

確認チェック項目
□売買価格と土地・建物の内訳を確認した
□手付金の金額と解除期限を確認した
□ローン特約の申込期限・承認期限を確認した
□違約金の対象行為と金額を確認した
□契約不適合責任の範囲・期間・免責を確認した
□付帯設備表と物件状況報告書を確認した
□賃貸借契約・敷金・保証金の承継を確認した
□管理委託契約の解約・承継条件を確認した
□決済日にローン完済・抵当権抹消ができる
□決済明細と納税資金を確認した

契約前に聞く質問

  • 買主の融資が否決された場合、契約は白紙解除になりますか?
  • 手付解除ができる期限はいつですか?
  • 契約不適合責任は、何を対象に、いつまで負いますか?
  • 設備の故障や修繕履歴は、どの書面に記載されていますか?
  • 入居者、敷金、賃料、管理委託契約はどのように承継しますか?
  • 固定資産税、管理費、修繕積立金はどの日を基準に精算しますか?
  • ローン残債が売却価格を上回った場合、決済方法はどうなりますか?
  • 売主側が追加で負担する費用は、仲介手数料以外にありますか?

既存記事との使い分け

売却全体の確認事項は、投資用マンションの売却で気をつけたいこと10選で整理しています。仲介会社・買取会社・金融機関など相談先の比較は、投資用マンションを売却したいとき、どこに相談する?を参照してください。

一次情報

解除・承継・決済の期限を1枚にまとめる

この条件で判断する

売買契約は、価格に納得しただけでは締結しません。

解除条件、契約不適合責任、賃貸借契約・敷金の承継、決済日に必要な手続を確認し、書面に反映されてから契約します。

本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別の投資・税務・法律上の助言ではありません。契約条件や責任範囲は契約書の内容により変わるため、重要な条項は宅地建物取引士、司法書士、弁護士等へ確認してください。

よくある質問

事故物件は3年たてば売却時に告知しなくてよいですか?

賃貸に関する一定の事案の目安を、売買の一律の期限には使えません。事実関係や質問の有無などを踏まえ、国土交通省のガイドラインを確認し、仲介会社や弁護士へ相談してください。

売買契約を結んだ後でも、気が変わればキャンセルできますか?

一般に、気が変わっただけで無条件に解除できるとは限りません。手付解除の期限、違約金、合意解除の条件を契約書で確認します。

契約不適合責任を免責にすれば売主は責任を負いませんか?

免責条項があっても、売主の属性、説明の有無、契約書の内容などにより扱いが変わります。重要事項は書面で開示し、個別に専門家へ確認します。

入居者がいるまま売却できますか?

可能ですが、賃貸借契約、敷金、賃料、管理契約などの承継条件を売買契約と決済明細に明記します。