住宅を買う負担が増すと、購入を先送りして賃貸に住み続ける人や、新築から中古へ選択を変える人が出てきます。NRIの住宅市場予測をもとに、こうした需要の移動が賃料と中古住宅価格にどう影響し得るかを読み解きます。

レポートの要約:着工減は一時的な反動だけではない

NRIの解説では、2025年度の新設住宅着工は予測85.3万戸に対して実績71.1万戸。予測との差の約半分を住宅価格と所得の乖離による影響と推計しています。2030年度は約80万戸へ回復し、その後2040年度に61万戸へ減少する見通しです。リフォーム市場は2040年度に約9.2兆円と予測しています。

要因と、実際に起きた変化

具体例は、2025年4月の省エネ基準適合義務化を前にした3月の駆け込み着工と、4月以降の反動減です。ただしNRIは、建築費・地価・金利による取得負担の増加、結婚・出産などの減少、施工人員不足による開発見送りも挙げています。制度対応だけでなく、買い手の負担と供給能力の両方から市場が縮むという分析です。

出典:野村総合研究所「2040年の住宅市場予測から読み解く住宅ストック時代への転換」(2026年8月21日)。上記は同資料の要約。2025年度は実績、2030・2040年度は予測です。全国・住宅全体の分析であり、投資用区分マンションの価格予測ではありません。

購入を先送りする人が増えると、賃貸需要はどうなるか

ここからはレポートを踏まえたSmart Selectの考察です。住宅を買うための支払額が家計に合わなければ、購入時期を遅らせ、現在の賃貸住宅に住み続ける選択肢があります。この動きは、賃貸市場から持家へ移る世帯を減らし、賃貸需要を支える方向に働きます。

ここでいう需要の変化は、人口が増えて新しい借り手が生まれることとは別です。同じ世帯でも「買う」から「借り続ける」へ選択が変わるため、住宅全体の需要が弱くても賃貸需要が相対的に底堅くなる可能性があります。

賃料には上昇圧力。ただし、どの地域・広さで起きるかが重要

借りたい世帯が増える地域で、希望する住戸の供給が追いつかなければ、募集賃料には上昇圧力がかかります。特に購入を検討していた世帯の受け皿になるのは、その世帯が必要とする広さと生活圏を備えた住宅です。

例えば、家族で購入予定だった2LDKを見送り、近隣の賃貸2LDKに住み続けるケースを考えると、直接支えられるのはその家族向けの市場です。同じ地域のワンルームにも同じ需要が生まれるとは限りません。これは需要の移動を説明する仮定例であり、NRIが調査した個別世帯の実例ではありません。

また、借り手の予算に合わない水準まで賃料が上がると、郊外や少し狭い住宅へ需要が移る可能性があります。賃貸需要の底堅さがどの家賃帯に現れるかは、地域ごとの供給と借り手の支払余力で変わります。

中古価格には、新築から移ってくる需要がどう効くか

新築の価格が予算を超える場合、立地や広さを大きく変えずに購入額を抑えようとする世帯は、中古も比較対象にできます。こうした選択の変化は、条件の合う中古住宅の買い手を増やし、価格を支える方向に働きます。

一方で、住宅全体の購入余力が弱まれば、中古を含めて購入を先送りする世帯も出ます。「新築から中古へ移る需要」と「購入市場そのものから離れる需要」のどちらが強いかによって、中古価格への影響は変わります。新築供給の減少だけで、中古価格の一律上昇までは読み取れません。

住まいの選択が変わると、需要の行き先も変わる
  1. 購入を先送り→賃貸継続賃貸需要を支える一方、中古の購入需要は弱まる可能性。
  2. 新築購入→中古購入条件に合う中古の需要を支える。賃料への直接の影響は限定的。
  3. 地域・広さを変更需要の移動先と元の地域で、賃料・価格の動きが分かれる。

表はSmart Selectによる影響経路の整理です。NRIによる賃料・中古価格の予測値ではありません。

今後の市況で注目するのは、需要が移った先

このレポートから考えたいのは、全国の着工戸数だけで住宅市場の強弱を判断しないことです。購入の負担増を受けて、賃貸に残るのか、中古へ移るのか、エリアを変えるのかで、賃料と価格の動きは分かれます。

地域別・間取り別の成約賃料と、中古住宅の成約価格・件数を重ねると、その変化を捉えやすくなります。今後の市況記事では、こうした実績が今回の見通しと合っているかを追います。

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よくある質問

住宅着工が減ると賃貸需要も減りますか?

購入を先送りして借り続ける世帯が増える場合、住宅全体の需要が弱くても賃貸需要が相対的に底堅くなる可能性があります。

新築供給が減れば中古価格は必ず上がりますか?

新築から中古へ移る需要が価格を支える一方、購入自体を先送りする動きもあります。地域と価格帯で影響が変わります。