東京圏でも住宅供給は一様に動いていません。貸家と分譲の違い、人口を集める地域の事情を分けて読むと、保有マンションの需要と競合を具体的に考えられます。
レポートの要約:全体の減少ほど、貸家は落ち込んでいない
みずほ信託銀行「不動産マーケットレポート」2026年9月号(執筆:都市未来総合研究所)によると、2025年の東京圏の住宅着工は268,730戸、前年比5.9%減でした。用途別では貸家が0.9%減、分譲住宅が11.5%減、持家が7.2%減。貸家は全体の約49%を占めます。東京圏は東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県です。
背景と、具体的な地域事例
同資料は人口流入や世帯分化が貸家需要を支える一方、建築費や用地確保が供給を制約すると整理しています。海老名市では鉄道利便性と駅周辺の再開発を背景とした子育て世帯の流入、成田市では空港関連の外国人就労者や、滑走路新設・物流施設の計画に着目しています。後者の計画は、すべて実現済みの需要ではありません。
出典:みずほ信託銀行「不動産マーケットレポート」2026年9月号、東京圏における住宅着工の動向、2〜3ページ(都市未来総合研究所執筆、公開ページ)。上記は同資料の要約。着工の2025年は暦年で、記事②の2025年度とは集計期間が異なります。
数字の読み方:「小幅減」は供給が止まったという意味ではない
ここからはSmart Selectの考察です。貸家の減少率が小さいという結果だけでは、需要と供給のどちらが強いかは判定できません。前年に近い規模の着工が続くなら、今後完成する物件が既存マンションの競合になる可能性があります。
また、着工は工事を始めた戸数です。完成・募集開始までには時間差があり、今の空室率や家賃の成約水準を示す数字ではありません。物件の取得時には、現在の募集在庫と、保有期間中に完成する近隣計画を分けて確認する必要があります。
地域事例を読み解く:同じ人口増でも、借り手が違う
以下は上記の地域事例から考える確認項目であり、各市の投資収益を予測するものではありません。
- 海老名:家族世帯の受け皿広さ・生活利便性に合う住戸に需要が向かう可能性。間取り別の募集期間と同タイプの供給を見る。
- 成田:就業場所との交通条件勤務先への交通、法人契約、寮との競合、計画の完成時期によって住宅需要へのつながり方が変わる。
地域名だけで買うのではなく、「誰が、どこへ通うために、いくらで借りるか」を確かめます。例えば駅徒歩が便利でも、対象の職場へ直通する交通手段がなければ、別の立地が選ばれるかもしれません。これは検討上の仮説であり、現地の入居実績で裏付けます。
賃料の行方は、需要と完成する供給の組合せで変わる
人口流入や就業機会の増加が賃貸需要につながり、新しく完成する住戸を上回れば、賃料には上昇圧力がかかります。反対に、同じ立地・間取りの供給が先行すれば、需要が増える地域でも募集条件の競争が起き得ます。
そのため、東京圏全体で貸家着工が小幅減だったことよりも、海老名の家族向け、成田の就業者向けというように、需要の受け皿と供給の対応を見ることが重要です。地域の成長と、すべての住戸の賃料上昇は同じではありません。
今回の資料は住宅着工の動きを扱っており、賃料上昇を直接確認した統計ではありません。賃料への影響は、今後の地域別・間取り別の成約実績と募集状況で見極める論点です。
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よくある質問
貸家着工の小幅減は賃料上昇を示しますか?
着工は工事を始めた戸数であり、成約賃料を示す数字ではありません。需要と完成する供給の組合せで影響が変わります。
人口が増える地域ではすべての住戸に需要が増えますか?
世帯の広さや通勤先の条件によって選ぶ住宅は異なります。地域の人口増をすべての間取りの賃料上昇とは捉えられません。