投資用マンションの営業を受けたとき、最も重要なのは営業担当者の説明だけで契約を決めないことです。
「節税になる」「家賃でローンを返済できる」「老後の資産になる」といったメリットだけでなく、物件価格、家賃、ローン、修繕、売却まで含めて、自分でも数字を確認する必要があります。
この記事では、投資用マンションを契約する前に最低限確認しておきたい10項目を整理します。
営業担当者の説明だけで契約を決めない
国土交通省は、投資用マンションの勧誘について、断定的な将来利益の提供、威迫、私生活や業務の平穏を害する方法、断った後の勧誘継続、迷惑な時間帯の電話・訪問などが禁止されていると案内しています。
「今日中に決めれば条件が良くなる」「融資枠がなくなる」などと急かされた場合は、その期限や条件の根拠を資料で確認してください。
基本的な判断手順は次の3段階です。
- 資料を持ち帰る
- 自分で比較する
- 必要に応じて第三者へ確認する
「説明を受けたこと」と「根拠を確認したこと」は別です。
契約前に確認する10項目
1. 販売価格と周辺相場
まず確認したいのが、提案された販売価格が周辺相場と比較して妥当かどうかです。
比較するときは、営業会社から提示された資料だけでなく、複数の情報源を確認します。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産の取引価格や成約価格などを確認できます。民間ポータルの掲載価格は原則として募集価格であり、実際の成約価格とは異なる場合があります。
売り出し価格、成約価格、査定価格は同じではありません。「相場より高くても節税で回収できる」という説明は、物件価格と税効果を分けて確認します。
2. 想定家賃と空室期間
確認するのは、営業資料に記載された満室想定家賃だけではありません。
- 現在の賃貸借契約書
- 実際の家賃入金実績
- 近隣物件の募集賃料
- 類似物件の成約賃料
- 過去の退去・空室期間
- フリーレント
- 入居募集時の広告費
「現在13万円で貸せている」ことと「退去後も13万円で貸せる」ことは同じではありません。サブリースの場合は、入居者が支払う家賃と、自分が受け取る賃料を分けて確認します。
3. 表面利回りと実質利回り
営業資料では表面利回りが大きく表示されることがあります。しかし、実際の手残りを確認するには、それだけでは不十分です。
| 指標 | 内容 | 含まれない可能性があるもの |
|---|---|---|
| 表面利回り | 満室想定家賃÷物件価格 | 空室・費用・融資 |
| 実質利回り | 運営費控除後の収益性 | 計算方法に差がある |
| 税引前CF | 税引前の現金収支 | 税効果 |
| 税引後CF | 税金を考慮した現金収支 | 将来税制・売却結果 |
「実質利回り」という名称でも、何を費用として計上しているかは会社によって異なる場合があります。必ず計算式まで確認してください。
4. 管理費・修繕積立金・賃貸管理費
区分マンションでは、管理費や修繕積立金が毎月発生します。
確認する項目は次のとおりです。
- 現在の管理費
- 現在の修繕積立金
- 修繕積立金の改定履歴
- 将来の増額予定
- 長期修繕計画
- 一時金の予定
- 管理組合の積立金残高
- 賃貸管理手数料
国土交通省は、マンションの適切な維持管理には、長期修繕計画に基づいて必要な修繕費を見積もり、適正な修繕積立金を確保することが重要としています。特に、購入時点の修繕積立金が低く設定され、将来増額されるケースには注意が必要です。
5. ローン金利・期間・返済条件
営業会社の収支表だけでなく、金融機関の融資条件を確認します。
- 借入額・自己資金
- 金利・固定/変動の別
- 返済期間・月額返済額
- 元金と利息の内訳
- 金利上昇時の返済額
- 融資事務手数料・保証料
- 繰上返済費用
- 団体信用生命保険
- 売却時の一括返済条件
ローン元本返済は資産形成につながる一方、現金は手元から出ていきます。税務上の利益と実際のキャッシュフローは分けて確認します。
6. 家賃保証・サブリースの条件
「家賃保証があるから安心」という説明だけで判断しないようにします。
契約書では、賃料の見直し時期、賃料減額条件、免責期間、原状回復費、修繕費、募集費、契約期間、解約条件、違約金などを確認します。
「30年間家賃保証」と説明されても、「同じ金額を30年間保証する」という意味とは限りません。
7. 長期修繕計画と一時金
管理組合については、次の資料を確認します。
- 長期修繕計画
- 総会議事録
- 過去の大規模修繕履歴
- 修繕積立金残高
- 滞納状況
- 管理組合の借入
- 一時金の予定
修繕積立金が段階的に増額される計画になっている場合もあります。購入時点の支出だけではなく、将来の負担も収支シミュレーションに入れてください。
8. 売却価格・ローン残債・売却費用
不動産投資は購入時だけでなく、売却まで考える必要があります。
売却後の手取り = 売却価格 − ローン残債 − 売却費用 − 税金等
例えば5年後、10年後などについて、ローン残高、想定売却価格、仲介手数料等、売却時の税金を試算します。
9. 売主・仲介会社・管理会社
誰がどの立場で利益を得るのかも確認します。
- 売主
- 仲介会社
- 賃貸管理会社
- サブリース会社
- 金融機関
- 紹介されたFP・税理士等
紹介された専門家がいる場合は、誰から報酬を受け取っているのかも確認しておくと判断しやすくなります。
10. 申込み・解約・クーリング・オフ
不動産売買では、すべての契約でクーリング・オフが利用できるわけではありません。
例えば、宅地建物取引業者が自ら売主となり、事務所等以外の場所で投資用マンションの売買契約を締結した場合には、原則としてクーリング・オフの対象となり得ます。
一方で、次の場合はクーリング・オフできないと国民生活センターは案内しています。
- 引渡しを受け、かつ代金全額を支払った場合
- クーリング・オフについて告知を受けた日から8日を経過した場合
売主、契約場所、支払状況、引渡し状況などによって適用可否が変わるため、判断が難しい場合は消費生活センターなどへ早めに相談してください。
自分で確認するときに使える参考サイト
不動産情報ライブラリ(国土交通省)
実際の不動産取引価格や成約価格、地価、防災、都市計画などを確認できます。公的な一次情報として最初に確認します。
不動産情報ライブラリを開く
楽待
投資用不動産の募集価格、利回り、物件条件などを比較するときの参考になります。
楽待で投資用物件を確認する
SUUMO
周辺の中古マンションや賃貸物件の募集状況を確認する際の参考になります。
SUUMOで周辺の募集情報を確認する
営業トークをそのまま信じない確認ポイント
| 営業トーク | 確認する内容 |
|---|---|
| 年収が高いほど節税できる | 課税所得・税率・損益通算額・税引後CF |
| 家賃でローンを払える | 空室・管理費・修繕・元本返済を含むCF |
| 都心だから値下がりしにくい | 類似物件の実際の取引価格 |
| 家賃保証があるから安心 | 賃料減額・免責・解除条件 |
| 今日だけの条件 | 期限の根拠を資料で確認 |
断りたい場合
契約する意思がない場合は、曖昧な返答ではなく「契約しません。今後の勧誘も希望しません」と明確に伝えます。
また、日時、会社名、担当者名、電話番号、勧誘内容、断った日時、メール、提案資料などを記録しておきます。
国土交通省は、契約しない意思を表示した後に勧誘を継続することを禁止しています。
よくある質問
提案書の数字が多い場合、何から見ればよいですか?
まず、年間家賃、年間運営費、年間ローン返済、税金の影響、売却時の手取りの5つに分けます。
断った後も電話が続く場合は?
会社名、担当者、日時、内容、断った記録を残し、免許行政庁や消費者ホットライン188へ相談します。
契約後でも比較できますか?
比較はできますが、取消し・解除・クーリング・オフには条件や期限があります。契約書類をそろえて、消費生活センターや法律専門家へ早めに相談してください。
まとめ
投資用マンションの営業を受けたら、契約前に次を確認します。
- 販売価格と周辺相場
- 想定家賃と空室
- 表面利回りと実際の手残り
- 管理費・修繕積立金
- ローン条件
- サブリース条件
- 長期修繕計画
- 売却価格とローン残債
- 売主・仲介・管理会社
- 解約・クーリング・オフ条件
営業資料だけで判断するのではなく、営業会社の資料 → 公的情報 → 市場の募集情報 → 自分の収支計算の順で確認すると、提案内容を検証しやすくなります。