2026年8月、首都圏中古マンションは「売れた件数が減り、販売中の物件が増える」動きとなった。成約件数は7月の3,638件から3,180件へ減少。在庫は47,151件から48,235件へ増え、平均成約価格は5,267万円から5,129万円へ下がった。
東日本不動産流通機構が9月10日に公表した8月度レポートから、前月との違いと、保有・売却を考えるオーナーへの影響を読み解く。[資料1・2]
レポートの要約:取引の減少と在庫の増加が続く
首都圏中古マンションの成約件数は前年同月比10.5%減で、5か月連続の前年割れ。在庫件数は8.2%増で、6か月連続の増加となった。成約㎡単価は81.60万円、前年同月比3.8%下落で、4か月連続の前年割れだった。
注目したいのは、東京都区部の取引量だ。成約件数は1,265件で前年比20.6%減。一方、成約㎡単価は132.69万円、同0.3%下落とほぼ横ばいに近い。単価の前年割れは76か月ぶりだが、値下がりの幅よりも、成約件数の減少が目立つ。[資料1]
前月との比較:成約458件減、在庫1,084件増
| 首都圏中古マンション | 2026年7月 | 2026年8月 | 前月比 | 8月の前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
| 成約件数 | 3,638件 | 3,180件 | −12.6% | −10.5% |
| 在庫件数 | 47,151件 | 48,235件 | +2.3% | +8.2% |
| 新規登録件数 | 16,474件 | 15,627件 | −5.1% | +9.7% |
| 成約価格 | 5,267万円 | 5,129万円 | −2.6% | −2.8% |
| 成約㎡単価 | 84.17万円 | 81.60万円 | −3.1% | −3.8% |
| 新規登録価格 | 6,834万円 | 6,751万円 | −1.2% | +21.5% |
| 在庫価格 | 6,866万円 | 6,939万円 | +1.1% | +29.0% |
出典:資料1・2。件数の前月比は掲載値からSmart Selectが計算し、小数第1位に丸めた。価格・㎡単価は平均値。
出典:東日本REINS 2026年8月度。首都圏中古マンション、当月の成約報告件数。前月比−12.6%は掲載値から算出。季節調整なし。
出典:東日本REINS 2026年8月度。首都圏中古マンション、月末登録件数。前月比+2.3%は掲載値から算出。
出典:東日本REINS 2026年8月度。首都圏中古マンション。前月比−2.6%。同じ物件の価格変化ではなく、成約物件の構成差も含む平均値。
8月は夏季休暇など季節性の影響を受けるため、7月から成約件数が減ったことだけで市況悪化とは判断できない。ただし、今回は前年の8月と比べても成約が減り、在庫が増えている。単月の前月比に加え、前年同月比で続く方向も見ておきたい。
新規登録は7月より847件減ったのに、月末在庫は1,084件増えた。ただし、在庫は成約だけでなく登録の取り下げなどでも変動する。「新規登録件数−成約件数」だけで在庫増減を説明することはできない。
市況分析①:売出価格の高さと、実際に売れる価格は別に動いている
8月の在庫価格は平均6,939万円と、前月の6,866万円を上回った。その一方で成約価格は5,267万円から5,129万円へ下がった。前年比でも、在庫価格は29.0%上昇、成約価格は2.8%下落と方向が分かれている。[資料1・2]
広告で高い価格の物件が目立っていても、それだけでは同じ水準で取引が成立しているとはいえない。売却査定で周辺の売出事例を示された場合は、近い条件の成約事例も見比べたい。
在庫価格6,939万円と成約価格5,129万円の差を「平均の値引き額」と扱うのも誤りだ。販売中と成約済みでは物件の集合が違い、立地・面積・築年数なども異なる。この差は、同じ物件がいくら値下げされたかを示していない。
市況分析②:首都圏全体の下落を、保有物件へそのまま当てはめられない
| 地域 | 8月の成約件数 | 件数の前年比 | 成約㎡単価の前年比 |
|---|---|---|---|
| 東京都区部 | 1,265件 | −20.6% | −0.3% |
| 東京都多摩 | 297件 | −9.5% | +9.1% |
| 埼玉県 | 412件 | +5.4% | +2.0% |
| 千葉県 | 398件 | +0.3% | +5.1% |
| 横浜・川崎市 | 581件 | −2.2% | −0.5% |
| 神奈川県他 | 227件 | −9.2% | +9.0% |
出典:資料1、本文3頁。すべて前年同月比。
東京都区部の取引が減る一方、埼玉県・千葉県は成約件数と単価が前年を上回った。地域差があり、「首都圏のマンションが一斉に値下がりした」という読み方にはならない。
首都圏の平均成約築年数も、7月の27.70年から8月は28.29年へ上がった。前年比では26.28年から28.29年への変化だ。平均価格には売れた物件の構成も反映されるため、単価の変化を同じ品質の物件の値動きと考えることはできない。また、地域別の集計だけから都心の購入者が郊外へ移ったとまでは判断できない。[資料1・2]
市況分析③:売却価格に加え、成約までの負担が重要になる
成約減少と在庫増加が続くと、売主同士の競争が強まり、売却に時間がかかる可能性がある。ただし、今回の資料だけで実際の売却期間の長期化までは確認できない。
保有者が考えたいのは、「高く売れるか」に加え、「その価格でいつ売れるか」だ。仮に現金収支が毎月1万円の赤字なら、売却が6か月延びた場合の持ち出しは6万円となる。これは現金収支の仮定例であり、その間の残債減少も含めて比較しなければ、保有の損得は判断できない。
売却価格から残債・売却費用・譲渡税を差し引いた手残りを計算し、売却までの持ち出し、残債の減少、修繕負担も並べる。高い査定価格に期待して待つ場合も、その間に何が増減するかを数字で把握したい。
中古戸建は別の動き。投資用物件には個別の確認も必要
首都圏中古戸建は、8月の成約件数が1,641件で前年比1.9%増、平均成約価格は3,960万円で同1.7%上昇。在庫は同1.2%減だった。マンションの動きを中古住宅市場全体へ広げることはできない。[資料1]
REINSの中古マンション統計も、投資用や賃貸中の物件だけを集計したものではない。ワンルームやオーナーチェンジ物件の売却判断には、近い立地・築年数・面積・賃貸状況の成約事例と、家賃から経費を差し引いた収益を合わせて見る必要がある。
8月のデータでは、成約件数の減少、在庫の増加、成約価格の下落が重なった。市況を読むうえでは、売出価格の上昇だけを根拠に強気に判断せず、実際に成立している取引の価格と量を重視したい。
出典・集計上の注意
- 資料1:東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度」、2026年9月10日公表。資料名:Market Watch サマリーレポート。
- 資料2:同「Market Watch 2026年8月度」。資料名:Market Watch データ編。7月との比較も本資料掲載の時系列を使用。
- 一次資料掲載ページ
- 成約は当月の成約報告、在庫は月末の登録物件。価格は平均値で、品質調整済み指数ではない。資料には2025年1月以降のシステム改修が成約件数に影響した可能性が記されている。市況分析はSmart Selectの解釈であり、個別物件の価格予測ではない。
よくある質問
REINSの8月度と8月公表分は同じですか?
異なります。本稿は2026年9月10日に公表された2026年8月度の取引・在庫を扱います。7月との比較にも同じ8月度資料の時系列を使っています。
在庫価格と成約価格の差は値引き額ですか?
値引き額ではありません。販売中と成約済みは別の物件群で、立地・面積・築年数なども異なるため、同じ物件の値下げ幅として計算できません。
売却時の条件整理は投資用マンションの売却判断ガイド、新築価格との関係は土地・建築費・供給立地の解説で詳しく扱っています。売る・持つ判断シミュレーターでは、残債と費用を入れて手残りを比較できます。

